遺伝子とゲノムの進化 (シリーズ 進化学 (2))

遺伝子とゲノムの進化 (シリーズ 進化学 (2))

遺伝子とゲノムの進化 (シリーズ進化学 (2))
P4:ゲノムとは「ある自己複製体の持っている核酸の最大単位」(齋藤、2004)
P11:1940年代から1960年代に興隆を誇った「進化の総合説」は1970年代における「中立論」に破れて、現代進化論の中心から消え去った。
P17:哺乳類ゲノムのGC含量は約40%、AT含量は60%
P20:広島・長崎に投下された原子爆弾放射線の効果を大規模に調べた研究の一環として、多数のタンパク質を「電気泳動法」で調べた結果、539170回の遺伝子の減数分裂のうち、3回に突然変異が認められた(Neel et al,1986)。世代当たり「3/539170」となり、この研究では突然変異率には原爆の影響はないと結論されている。(突然変異といえば減数分裂=世代あたりのことで、細胞分裂あたりの変化は考えられなかった時代の話)
P26:次世代に伝わる突然変異遺伝子コピー数の期待値が1を超えるような、かなり有利な突然変異であっても誕生したとたんに絶滅する可能性が高い。
P28:「合祖時間」の期待値は 4N(1-1/n) 世代で n が大きくなると、近似的に 4N 世代となる。:生物が有限個体で暮している限り、近親交配は程度の差はあれ、常に生じている。平均して4N世代遡れば、Nがどれ程巨大な数字でも、有限であれば、1個の共通祖先遺伝子に必ず辿り着く。
P30:固定しなかった集団中の殆ど全ての遺伝子 1-1/n は消失する。絶滅が生物進化の常態なのである。
P31:DNAの最小単位ヌクレオチド1個における遺伝的多型を「単一塩基類=SNP」と呼ぶ。エクソン領域に存在するSNPをcSNP、以外のゲノム領域に在るものをgSNPと呼ぶことがある。リピート数多型のうち、リピート単位が1-5塩基程度と短い場合をSTRあるいはマイクロサテライト多型と呼び、リピート単位が数十塩基である場合ミニサテライト多型と呼ぶ。
P45:中立進化が分子レベルにおける進化の一般的性質である。このため、正の淘汰が存在しない状況では、遺伝子の変化は中立進化によって起るのである。負の淘汰が弱い場合には、偶然の変動のほうが強く働き、中立進化と似た振る舞いをする。
P49:HLA-A遺伝子座には、超優性淘汰が生じていると推測されている。
P52:同義置換の進化速度は突然変異率にほぼ等しく、非同義置換の進化速度は、同義置換よりも遅い。
P54:マウスとラットのゲノム配列を比較して、9390個のタンパク質コード遺伝子の28196個のアミノ酸置換パターンを調べた結果、正の淘汰を受けたアミノ酸の割合は0.5%、つまり、99.5%のアミノ酸置換は中立進化している。
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P113:O157−H7堺株のゲノムサイズはK12株より860キロ塩基対も大きく、全体で5.5M塩基対。この違いの最大要因はO157株染色体に挿入されている「18」のファージのゲノムによる。
P133:水平伝達:「全ての遺伝子が、十分に大きな時間スケールでは、あらゆるゲノムを自由に行き来する潜在能力を持つ」
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P226:発表された古代DNA発見の殆どが「資料混入」である。
P235:図4−ミトコンドリアDNAのDループ領域の塩基配列からー2000年前(漢代)の山東省(臨淄)人は現代東アジア人類集団クラスタの「外側」に位置し、同じく2500年前(春秋戦国時代)の山東省人は現代ヨーロッパ人類集団クラスタと現代トルコ人集団の「中間」に位置している。2500年前から2000年前の500年間に中国山東省人集団の遺伝的構成に大きな変化があった。商、西周、秦といった古代中国王朝は「西方」由来の人々により築かれていたと考えられる。
AGE --- www.ddbj.nig.ac.jp/aDNA/index-j.html
P244:バクテリアのゲノム進化においては、無視できない頻度で水平遺伝子移行は起っている。
P250:タコとヒトのカメ眼の相違:タコには盲点がない、偏光を認知できる、レンズを平行に移動させて焦点を調節せる、レンズのクリスタリンの構成タンパク質は両者で異なる、
P251:収斂進化ではなくて分岐進化:タコ眼の1052本の遺伝子候補中80%がヒト眼に発現する遺伝子と共通(ヒトのフィブロブラスト細胞に発現している2000の遺伝子セットではタコ眼1052本の比較では20%のみ共通)
P253:プラナリアの神経系に関与すると推定される遺伝子候補116本の中35%は酵母と共有、シロイヌナズナとは85%、線虫で90%、ヒトやマウスとは95%以上の遺伝子が共有されている(Mineta et al.,2003)。脳の発生に係る多くの遺伝子が神経系すら存在しない植物や単細胞生物としての真核生物にも共通して存在しているのは、これら遺伝子の起源が極めて古いことを強く示す。