日本の食と農
P4:”人間というのは集団的誤解をする動物である。”
P6:薬害エイズに関わった役所や免疫学者達は製薬会社の利益の為に大量殺人を黙認したが、個々の役人・学者には加害者・当事者意識を持っていなかった。破滅的な結果に至り、他者から糾弾されてから、自分達組織が恐ろしい動機に支配されていたかに気づいたのである。
P9:日本では公共公益を気にすることなく、市民は私益を追求できると誤解されている。
P22:有機農業は収量リスクのため契約量の3倍を生産する。また、有機農産物の宅配コストに「気を配らない」のが不思議である。
P28:スーパー>デパ地下>駅中>ホテ一
「振り売り」を拒否したのは消費者自身
P38:東西冷戦後の世界は右傾化しているが、日本では戦前戦中の恥ずべき歴史から、インテリは右ではならないという暗黙のプレッシャーがある為に、右傾化の捌け口が食文化を騙った国産品礼賛に回っている。
P43:学校や教育は過度に美化されがちで、教育をすればよいという単純な発想は危険ですらある。途上国では教育の名の下に汚職、癒着、専横が行われ、不平等が拡大している例さえある。
給食が弁当に切り替わると、途端に栄養バランスが崩れる。
P47:安全と安心は分離して考える:日々我々が安心して食べているものに、BSEの比ではない有害性が検出されているものが多々ある。ー石堂徹生
P51:平均的日本人は一日に163ピコグラムのダイオキシンを摂取しているが、これによる生涯の発ガンリスクは一万分の1.3である。
「今月のリスク」ー中西準子
P55:偏食のままトレーサビリティーに執着するのはむしろ食の危険を高める。:昔から意識しないで安心して食べていたものから、発がん性などの危険が発見されるケースは増える一方。−松永和紀
P72:農協法に違反している非農家の農協正組合員は少なくとも100万戸程度はある。政治活動はJA全中で、JA全農はしない。
P75:JAは食品偽装の常習者
P76:農水省も農経研究者も偽装表示に苦言を呈しても、正組合員資格違反や員外利用率違反には見てみぬ振り
P78:JAの機能を要約すれば「崩壊しつつある伝統的農村集落構造を保護し、農村部随一の票田の維持に努める」
P80:零細農家の殆どは恒常的な農業外の収入機会で生計を維持できており、離農しても大規模農家から地代収入ないし農地売却益を得ながら、これまでと同等以上の生活ができる。『農業問題の政治経済学』
P93:米の調整・貯蔵設備や育苗センターなど共同利用施設の赤字を信用・共済事業の収益から補填しているのが、零細農家をJAに繋ぎ止めている紐帯。
P94:「農家のJA離れ」という傾向は過去30年間、全く確認できない。
P96:零細農家が政治的主張までJAに依存するのは極めて非合理的なことであるが、ごねる集団というのは自分たち自身のエゴを自覚したくない。農民は「JAに従う」ことで農民エゴを自覚しないですむ。これは組織を持続させる上では重要な要素である。
P102:1995年食糧法施行で、従来のヤミ米が「計画外流通米」として公認された。
P104:JAは法令違反無しには活動できない組織である。
P107:1950年代中のJA体制確立時期から1960年代高度成長期のJAは極めてポジティブな貢献をしている。その経験は今日の東アジア・東南アジア諸国にとって示唆に富む。
P110:1970年頃農家ー非農家間の所得格差は解消し、逆転さえした。?
P115:住専救済の為に1996年度予算で6850億円の公的資金が投下されたが、この原因は資金運用能力を欠いたJA信用・共済事業が安易な利鞘稼ぎに住専に対して過剰な貸し込みを行ったことにある。
P125:先進国が途上国に市場経済(先進国ルール)を望むなら、途上国市民に先進国の参政権を与えるべきである。
テロ・暴動は「絶対的貧困=困窮」よりも「相対的貧困=怨嗟」に由来する問題である。
P129:梅は斜面を転がしてネットで収穫できれば楽。斜面の梅園の様に転用可能性の無い不良農地なら農業に専念するしかない。
P131:優良農地は平坦・水利・日照条件が良いので転用機会の誘惑に抵抗できない。
P132:日本では農業生産に長けた者ではなく、政治力がある者が濡れ手に粟の農地転用収入を得る構造になっている。この転用収入は毎年、農業生産額の「8割」に相当する。
P137:農地法の転用規制の運用は「ザル」である。
P139:農業委員会が農地転用の便を図ることでの収賄は相当数ある筈で、摘発されるのは「氷山の一角」に過ぎない。
P144:いくら歴史的なものであっても経済的インセンティブがなければ、人々はそれらを簡単に捨て去る。
P145:農水省の本音は「零細農家ー政治家ー農水省」という政治力学の援護である。
農地改良投資後の農地は、ショッピングセンター建設予定地の最有力地である。
P146:「農政関係の公務員は農家より建設業者との付き合いが深いのではないか?」
日本農業の最大の生産物は「農地」である。:農地の転用収入は3大都市圏を除外しても耕種農業生産額の「約6割」に相当する。
P149:優良農地が開発されてゆくのは一握りの地権者と開発業者を潤すだけで、社会的遺失は大きく、兼業農家の経済水準は総じて恵まれており、地権者エゴで転用収入という不労所得まで転がり込む構図は、所得分配上も容認できない。
P151:「日本では、実質的な意味での都市計画決定への市民参加は無く、・・・利害が対立する市民同士の中から街づくりに関する共同の意思=合意、共通の街のイメージが形成されるという欧米型の参加民主主義のメカニズムは存在しない。利害を異にする市民同士は話し合わず、市民は一方的に行政に対して、別々に注文をつけるだけである」岩田規久男・小林重敬・福井秀夫
1992年総務庁行政監察では農業基盤整備のガイドラインに「違反した転用」が具体的に指摘されている。
P156:ヤミ小作:親戚や極親しい間柄に限って、内々に賃借する脱法行為だったが、1970年農地法改正で合法となる。
P162:農地に関連する法律群は収拾不可能な状態になっている。
1993年農業経営基盤強化促進法
P168:真面目に農業で利益をあげるには、今日の農地価格は高すぎる。
P172:農業の衰退も耕作放棄も転用期待が原因であるのに企業・財界、零細農家、JA、政治家、農水省、農経研究者が寄ってたかって情報操作を容認している。
P197:外国人就農者は公然の秘密、農業生産は言葉の壁が低い。
P198:1997年、AMIの農地転用(125ha)
P200:欧米では土地利用規制は規制緩和の対象外である。
P206:法定容積率は恒久的権利ではない。都市計画に従って容積率が半分に引き下げられても、都市計画法では地主は役所に補償を請求できるとは考えていない。
P224:産業廃棄物処理業が農地に汚泥を不法投棄して、県の指導を受けても「肥料を播いた」と主張できるのは、”善良”な市民・農家ですら、地権者エゴでごねまくり、マンション立て替え円滑化法や遊休農地対策行政が強権発動されない状態で、狡猾な悪徳業者にだけ強権発動できる”訳が無い”のを知っているからである。
P243:転用規制を財産権の侵害であるかのように喧伝するのは、憲法の曲解・私有財産制の曲解であって、地権者エゴという日本社会の悪癖である。土地の私権を公共性によって制限するのは、憲法29条の財産権の侵害には当らないのは明白である。
P244:悪魔のシナリオ:「とりあえず農地保有自由化に反対して時間稼ぎをして、その間に転用規制を骨抜きにするだけ骨抜きにする。その後、外部の要求に屈した振りをして[内心では嬉々として]農地保有自由化をして、農地を買い漁らせる。
P253:最終臥床期間が短かくなれば、高齢化しても医療費はかからない。
P254:北朝鮮は一貫して食糧自給政策を採り続けてきたが、顛末は惨憺たるもの。
P262:現世代の日本人だけの利益を追求せず、世界やアジアの隣人たちも含めた将来世代に幸福をもたらす選択をすべきである。