儒教ルサンチマンの宗教 (平凡社新書 (007))

儒教ルサンチマンの宗教 (平凡社新書 (007))

儒教ルサンチマンの宗教
P70:孔子を絶対の有徳の聖人と喧伝するほど、徳治の因果律の破綻が鮮明になるという隘路から儒家は永遠に抜け出せない。
P93:(子思学派)『中庸』全体の編述意図は、受命なき聖人たる孔子を無冠の王者だと主張する点にある。
P99:『孟子』が『春秋』孔子著作説を偽装
P148:緯書は別名「孔丘秘経」、前漢末期に公羊家が偽作に励んだ全くの偽書
P262:・・・孔子を王者と偽り、先王・周公を排除して、儒教開祖の地位を独占させることは当初から儒教運動最大の目標であり、一貫した悲願であった。そもそも「貧にして且つ賤(『史記孔子世家)」の孔子が自ら王者たらんとした野心から全てが出発したのであり、孔子を落魄の死へ追いやった歴史的現実への復讐と、(王者になる)夢を叶えて無念を晴らさんとする鎮魂とが、儒教運動を支える情念だったからである。
儒教運動がその目標実現を目指すとき、厄介な障害となったのは、孔子の身分が一介の匹夫に過ぎなかったことと、経書著作権孔子になかったことの二点。
P270:儒教にとって最も厄介な書物は、『論語』である。同様に儒教にとって最も困った人物は、孔子であった。
P273:詐欺師こそ中華の守護神:孔子の詐欺師的人生を虚飾で覆い隠そうとした結果、数々の伝承やら文献やら学問やらが、大量に生み出され、経学の膨大な体系を築き上げるとともに、中国が誇る文化の重要な柱ともなった。しかも、孔子こそは永遠に中国世界を教導する「万世帝王の師」だという共同幻想は、・・・他民族国家でしばしば征服王朝が成立した中国世界にあって、複雑な内部構造を抱える中国世界の枠組みを維持する精神的・文化的紐帯の機能を果たし続けた。
・・・中国をより深く理解しようとすれば、やはり『論語』は読むべき書となる。論語の内容を踏まえずには、・・・よく理解できないことが多い。