ナンパを科学する ヒトのふたつの性戦略

ナンパを科学する ヒトのふたつの性戦略

ナンパを科学する 坂口菊恵
序章 ナンパ・痴漢をどうやって研究するか
P12:「毅然とした態度」というのは互いに社会的相互作用が始まった後の行動について言うのである。自分がナンパや痴漢のターゲットになっているかどうかもわからない状態で、どうやって毅然とした態度をとればよいのだろう?
P23:男性は女性からの性的関心を過大評価しがちである。
P28:ショウジョウバエも立派な求愛ダンスを踊る。
P61:・・・もし、女性が未知の男性に対して「スキがある」ということが、相手の男性に対して関心を持っていないにもかかわらず、関心があるかのような行動をとる傾向があるということを意味しているならば、(少なくとも待合室状況においては、)頻発に性的なアプローチを受ける女性はスキがあるどころか全く逆であることがわかる。・・・男性が「自分の関心=相手の関心」と思いこまないようにシグナルを送っているようなのだ。
P63:女性は男性の自分に対する関心の高さを過小評価する傾向がある。
P65:女性の魅力度はナンパや痴漢にあう頻度を予測する決定的要因ではない可能性が高い。また、少なくとも10分間の相互作用の機会がある待合室状況においては、ナンパや痴漢によく遭う女性は「スキがある」とはいえず、むしろ知らない男性と二人きりでいることのリスクをよくわかっており、男性に「誤解されないように」動きの質などを調整する。
第2章 二つの性戦略
P75:E・O・ウィルソン『社会生物学』の最終章「ヒト:社会生物学から社会学へ」が物議を醸した。
マーガレット・ミードの『サモアの思春期』は当時の文化人類学者が見出したいと願っていたもの見たもの。
P90:シェア・ハイト
P100:頻度依存淘汰
P102:「よい父親」男、「よい遺伝子」男:類は友を呼ぶ。長期的な配偶戦略指向の男性は長期的な配偶戦略指向の女性をパートナーに持ちやすく、短期的な配偶戦略指向の男性は短期的な配偶戦略指向の女性をパートナーに選ぶ傾向があることが判っている。
第3章 ナンパ相手の選び方
P109:「対人関係とデート行動に関する実験」−男性の短期的配偶戦略への指向性の高さは、男性によっても女性によっても非常によく推定される。・・・男女共に、プレイボーイを敏感に検出する認知メカニズムを備えているようなのだ。一方で、女性の性質をこの実験状況で評定者が推定するのは難しかった。しかしながら、男性の評定者のみ、女子学生の短期的配偶戦略指向の高さをそれなりに推定することが出来た。
P110:思春期(14〜18歳)に未遂・既遂のレイプに遭った女性は、大学一年次に13.7倍レイプに遭いやすい。・・・レイプにあった経験のある学生はリスクの高い行動を好む傾向が強い。・・・短気的配偶戦略への指向性の高さを示唆する。
P120:「襲いやすさ」−「歩き方」に「自身がなさそう」、「暴行を受けやすそう」が現れている場合。
P124:ポール・エクマン
P128:セルフ・モニタリングの高さと短期的配偶戦略への指向性の高さとの間には安定した関係がある。
P147:痴漢によく遭う女性は、神経症傾向が高くて外向性が低い「被害者性格特性」を持っていると一般的には信じられているものの、実際にはそうした性格傾向ではない。
第4章 悪い男がモテるわけ
P158:「平均性」
P197:プレーリーハタネズミはのメスは交尾なしでもオキシトシンが脳内に発現していれば、6時間オスと一緒に過ごすだけで、夫扱いする。オスはパソブレッシン
P216:男女を問わず、短期的配偶戦略への指向性が高い人は、(確率的に)身体的な魅力の高い人を性的なパートナーとして好む。
P217:(手の)人差し指よりも薬指が長いのが男性型である。
第6章 環境に応答するホルモン
P220:「クーリッジ効果」
P224:男性がより乱婚的、女性がより一夫一妻的と、種として既に傾向がが決まっている場合、その社会の配偶戦略の傾向は、売り手市場となっている側の性が好む配偶戦略寄りになっていく。すなわち、男性が余って女性が売り手市場の場合、女性は、相手はよりどりみどり、といって乱婚的になるのではなくて、逆に、短期的配偶戦略への指向性が小さくなる。女性が余って男性が足りない場合は、男性の好みに合わせているためか、女性の短期的配偶戦略への指向性は高くなる。
P234:人間の場合は、1週、あるいは3週といった禁欲によって血中のテストステロン濃度が上昇する。
P237:「プロラクチン」−パートナーとの性交によるオーガズムでは、自慰によるよりも何倍もの量のプロラクチンが分泌される。・・・オスが子育てする魚の子育て行動はプロラクチンによって引き起こされる。・・・ディスカスはオスもメスも身体の表面から「おっぱい」を出す。
P239:テストステロン濃度が低くプロラクチン濃度が高い男性の方が、赤ん坊の泣き声といった刺激に対して共感性が高い。・・・また、既に子供を養育した経験のある父親では、赤ん坊の泣き声に対するプロラクチン濃度の反応性が高まっていた。赤ん坊の刺激が「嫌じゃなくなる」ようなのだ。
P241:配偶努力から養育努力へ
P250:人間の女性で性的な動機付けを高めるのに重要な役割を果たすのは、女性ホルモンのエストラジオールではなくて、テストステロンなどの男性ホルモンらしい。
P253:女性の排卵期周辺のピーク時のテストステロン濃度が、最もよくセックスの平均頻度を予測していた。
終章 配偶行動にはコミュニケーションが必要だ
P272:サイコパスはセルフ・モニタリングと短期的配偶戦略への指向性の両方が極端に高いタイプの人物像では?
P273:サイコパス自閉症者は、セルフ・モニタリングという観点で見ると対極に位置しているが、他者の心に共感を感じるのが難しいという点が共通している。