不道徳教育

不道徳教育

不道徳教育 ウォルター・ブロック 橘玲 訳
・はじめてのリバタリアニズム 橘玲 
P17:「アルコール・タバコ・火器局」による「ブランチ・デビディアン襲撃=ウェイコの悲劇」は「ミリシア」にとって、連邦政府による「武装する権利(自然権)」の侵害であり、少なくとも犯人の理屈では、1995年4月19日オクラホマ連邦政府ビル爆破は正統な報復行為だったのである。
P21:アメリカの二大政党による政治的対立というのは、「自由」をどのように修正するのか(しないのか)の争い。・・・リバタニアンは純化された自由主義である。保守主義者(伝統重視派)であれリベラリスト(平等重視派)であれ、自分自身が拠って立つ(自由の価値)を否定することは原理的に不可能なのだ。
P23:「功利主義原理主義の対立」
P34:ジェームズ・シクワチ「お願いだから、もうこれ以上、援助しないで下さい・・・私たちに必要なのは援助ではなく、健全な市場経済なのです。」
P36:「移民規制の撤廃」−この処方箋は、国民の既得権を奪うので、先進国の政治家は、犯罪者を閉じ込める看守を雇うように、難民予備軍を抱える国の腐敗した政治家にせっせと金を送っている。
P44:国家の機能を縮小してしまうと公務員が激減し失業率が上昇するというのは杞憂である。国家のくびきから解き放たれた「公的」サービスは、自由な市場の中で爆発的な成長をはじめ、職を失った公務員を補って余りある雇用が発生するだろう。公的部門に残るのは市場競争に馴染まない仕事だけなので、身体障害者精神障害者を優先的に雇用することで福祉を劇的に改善することも可能になる。
P50:徴税とは、善良な市民に対する、国家による暴力的な権利の侵害にほかならない。払った税金の見返りとして国家がサービスを提供しているとしても、この結論は変わらない。大事なのは「取引」が強制されていることである。私たちは、この申し出を断る自由を持ってはいない。
P51:「原初の暴力を伴わない全ての行為は悪ではない」
・売春婦
・ポン引き
女性差別主義者
P74:国家は中絶の禁止によって女性から自己所有権を奪い、奴隷並みの扱いをしている。
P75:国家による差別だけが女性の権利を侵害する・・・
P77:女性に対する深刻な被害は殆どの場合、公共の場所で発生する・・・
P78:非暴力的な女性差別は、国家権力の影響下にある場所で発生する確率がずっと高い、・・・
P79:「補填格差」=「職務に付随する心理的な損失を埋め合わせるのに必要な金額」→役人にはセクハラを止める理由は何一つ無い。
P84:男女雇用機会均等法は働く女性の人生に破壊的な影響を及ぼす。・・・労働基準法男女雇用機会均等法の無い自由な市場においてのみ、真に同等の生産性を持つ男女が同じ額の報酬を得る平等な社会が実現する。
P86:私たちはいつも差別している。・・・マクソリーズに入店を断られた女性の経験は、「これからホテルに行かない?」と口説いて袖にされた男性の経験と同じものである。男の誘いを断った女性は、彼の「権利」を侵害しているのではない−なぜなら彼の「権利」には、彼女とセックスすることは含まれていないのだから。彼女が奴隷でない限り、そこには「可能性」はあるだろうが、「権利」はない。
・麻薬密売人
P92:覚醒剤の禁止された社会では、重度の中毒者は、少なくとも一日に一万円はシャブの購入に費やさなければならない・・・シャブの末端価格を容易に手が届かないところにまで引き上げ、中毒者たちを自分か被害者の死をもって終わりを迎える他無い犯罪者人生に駆り立てるものこそ、覚醒剤取締法なのである。
「麻酔剤中毒の医師」
P94:シャブの売人の役割とは、彼がこの業界に参入してくる目論見とは裏腹に、覚醒剤の末端価格を引き下げることである。新しい売人が一人路上に立つたびに、需要と供給の法則によってシャブの販売価格は下落する。一方、警察当局による規制や取締り強化によって売人の数が一人減るごとにシャブの価格は上昇する。
P97:ハードドラッグ解禁の過激な主張がアメリカで力を持つようになったのは、数十年に及ぶ「麻薬戦争」に敗北しつつあることが明らかになってきたからだ。連邦政府の麻薬銃統制予算は年間200億ドルに達するが、刑務所を満員にする以外に効果は発揮していない。
・シャブ中
P101:ある人がどのような人生を選ぼうが、その人の勝手である。
P102:「シャブ中は生産性を低下させない」
P104:自ら処方箋を書く薬物依存症の医師−モルヒネに依存した医師の場合、その殆どが生産的な生活を維持し、他の医師と同様に患者に対して充分なサービスを提供している。
・恐喝者
P108:恐喝とは「沈黙と言論の自由」との取引の提示。取引が成立しなくても、恐喝者は合法的に言論の自由を行使する以上のことをするわけではない。
・恐喝合法化で犯罪が減る?
P114:「真実が君を解放する」−恐喝者のただ一つの「武器」は真実である。
原理主義リバタリアンの論理からすれば著作権知的財産権も否定される。
・2チャンネラー
P118:・・・卑劣で不愉快でとうてい許し難いと感じる類の言論を使った「極限性能試験」によってのみ検証することができる。
P119:人は自分の評判を「所有」することはできない。
P120:虚偽に基づく名誉毀損を禁じていると、騙されやすい大衆はゴシップ雑誌に書いてあることを全て信じてしまうし、ネット上の匿名掲示板にしても、規制が厳しくなればなるほど投稿の信用度は上がってゆく。誹謗中傷が合法化されれば、大衆はそう簡単に信じなくなるだろう。
・学問の自由を否定する者
P127:「学問の自由」は、詐欺や窃盗と同類である。それは個人が、自由かつ自発的に契約を結ぶ権利を否定している。
・満員の映画館で「火事だ!」と叫ぶ奴
・ダフ屋
「価格による制限」と「価格以外の手段による制限」
・悪徳警察官
P148:映画「セルピコ」の主人公は麻薬取引を暴力的に禁じることで、市民社会を犠牲にして、法律を優先したのである。・・・大多数の警察官はこの事実にうすうす気づいているので、私たち一般市民を守るために職務をサボっている。
・ニセ札づくり
P162:「偽造されたお金を偽造することは違法ではない」
P169:貿易収支の不均衡は国際的なインフレの前触れもある。
・どケチ
P176:どケチの存在は通貨の流通量を減らす効果を持つ。
・親の遺産で暮らす馬鹿息子
P184:ヴォネガット『モンキーハウスへようこそ』の独裁者ハリソン・バージャノンの世界。
闇金融
P192:国家による法的禁止が、まともな商売をヤクザの独占市場に変える。
P193:ある人貸し手にするか借り手にするかは時間選好率の違いであり、収入の多寡は関係ない。
・慈善団体に寄付しない冷血漢
・土地にしがみつく頑固ジジイ
P211:国や自治体による土地収用は「個人的」な利益追求の為に行なわれてきた。
P212:有能な管理者がより多くの土地を獲得し、無能な管理者が財産を失えば、その国の不動産は、総体としてより効率的に活用されるようになる。
・飢饉で大儲けする悪徳商人
P220:「悪徳商人こそ、食糧価格を均衡化する」
・中国人
P230:「貿易」により発生した失業者の給与の減少分や職業訓練の費用を政府と企業が負担するのは間違いである。
P231:・・・特殊な技能を持つ労働者は、「投資家」であると同時に「資本家」でもある・・P232:取引の禁止は、取引に参加する当事者への最大の侮辱である。
P237:・・・SF的未来において、中国はあらゆる生産分野で絶対優位にある。だが中国人が受け取った円を使おうとすると、日本が比較優位にある製品を輸入するしかない。
P238:「シニョレッジ=紙切れと商品を交換する」このような法外な恩恵を受けられるのは基軸通貨だけ
ホリエモン
P248:農民が人々の空腹を「利用」して農作物を売るように、企業家は人々の知識の不足を「利用」して、顧客に欠けているものを供給するのである。・・・農業や製造業だけが、生活に必要なものを作り出すのではない。企業家もまた創造する。・・・彼はチャンスのブローカーであり、みんなが利益を得られる機会を逃さないようにするのが彼の仕事だ。
P250:成功した(すなわち大儲けした)企業家とは、市場の歪みを正した者のことである。
・ポイ捨て
P258:「ポイ捨ては公共の場所で起こる」
・環境を保護しない人たち
P270:もし、全ての企業がカルテルを結び、買い替え増やすため粗悪品の生産に合意した場合は、全てのメーカーがより高品質の商品を製造する、すなわち、合意を誤魔化すことに強く惹かれるのは明白なように思われる。他のメーカーが律義に合意を守っているなら、少しマシな商品を売り出しただけで、消費者の圧倒的な支持と莫大な利益が約束されている。カルテルを結んだのは利益を得るためであるが、儲けたいというその欲望が合意を破るようメンバーを唆すのである。・・・カルテルが成功すればするほど、カルテルを壊そうとする力(新規参入)が強まる。
P271:自由市場では、企業はカルテルを維持できないのことは明らかである。しかしここに国家が介入してくると話は変わり、談合の維持も、意図的な粗悪品の生産も可能になってしまう。
P272:国家はカルテルを壊す内在的な力が働くのを度々妨げてきた。アメリカの鉄道はカルテルを形成し、運賃の値上げとサービスのカットに合意した。運賃値上げで乗客数が減り、利益の減少した各鉄道会社は、合意した運賃を引き下げることで、他社の顧客を奪おうとした。これはカルテル違反なので運賃値下げはリベートの形でこっそりと実施された。ところが政府は、各社のこうしたカルテル破りを認めるどころか、逆にリベートを禁止してしまった。こうしてアメリカの鉄道産業は衰退の一途をたどったのである。
労働基準法を遵守しない経営者
P280:労働基準法は、・・・正確に言うならば、失業促進の為の法律である。その趣旨は、雇用主に対して最低賃金以上で労働者を雇うよう命じることではない。法で定められた賃金以下で労働者を「雇わない」よう強制することである。・・・国家は、低賃金か失業かという選択肢に直面している労働者に、失業を選ぶよう義務付けている。
P281:賃金は「労働の限界生産力」で決まる。
P282:限界生産力と実際の賃金の差が大きければ大きいほど、カルテルに参加している雇用主は仲間の目を誤魔化すことで大儲けのチャンスを手にすることになる。
P285:「最低賃金の引き上げがニートを拡大」−労働者の賃金が限界生産力を下回らないよう保障しているのは市場の力であり、自分の利益を最大化しようとする企業家の強欲である。そして生産力の水準は、科学技術や教育、資本の蓄積によって決まるのであって、「進歩的」な法律によってではない。労働基準法は、自らが主張しているような役割を果たしていない。
P286:・・・最低賃金が失業を作り出しているのは明らかな事実である。賃金水準が上がれば、働きたい人(供給)は増え、手に入る仕事(需要)は少なくなる。
アメリカでは、最低賃金法が時給40セントから75セントに引き上げられた時エレベータガールが絶滅した。
P287:法に定められた最低賃金はその賃金水準以下で働く人にのみ影響を及ぼす。・・・最低賃金が時給一万円になったら、その賃金に見合うと思われる者だけが労働を許され、残りは解雇される。
P289:アメリカでは、障害者の一部(経度障害)を最低賃金以下で雇用することが認められている。・・・アメリカ政府は、最低賃金規制が「軽度の障害者」の雇用を奪うことを理解している。
P290:労働基準法を声高に擁護するのは労働組合である。・・・熟練労働者と未熟練労働者は互いに代替可能であるため、彼らは競争関係にある。・・・最低賃金を上げることで「熟練労働者=組合員」は競争相手の未熟練労働者(若者)や非組合員(特に外国人労働者)を叩き出す。
・幼い子供を働かせる資本家
P296:そもそも徴兵には「自分の意思」がないのだから、それを持って大人の基準にするのは無理がある。
P297:子供が大人になるのは ”私有財産を権を確立し、自らの人生を管理するようになったとき”←マリー・ロスバード
P299:「キッズリブ」
P301:リバタリアンの見解によれば、親は原則として、子供に対する積極的な扶養義務を負わない。
「自ら望んで子供を産んだのだから親には子供を養育する義務がある」との暗黙の了解は、レイプされた母親にはあてはまらない。彼女はその意思が無かったからだ。・・・全ての親には子供に対する扶養義務はないのである。
P304:親は子供を扶養する限りにおいて、子供に対して支配権を行使することができる。
雨の降る日曜は幸福について考えよう