ミラーニューロンの発見―「物まね細胞」が明かす驚きの脳科学 (ハヤカワ新書juice)

ミラーニューロンの発見―「物まね細胞」が明かす驚きの脳科学 (ハヤカワ新書juice)

ミラーニューロンの発見 マルコ・イアコボーニ
第1章 サルの「猿真似」
P18:ブタオザルはおとなしく扱いやすい。
P52:「手に届くところにある言語」−言語の先駆体はミラーニューロンであるという考えは、解剖学的観察からであった。ミラーニューロンが最初に発見されたサルのF5野はヒトで言えばブローカ野に相当する。
P55:ミラーニューロンは、サル自身が実行できる行動−言うなればサルの運動レパートリーにある行動−だけをコードしている。サルはパントマイムをしない。
P56:「イモ洗い」をするニホンザル−イモ洗い行動は模倣学習というよりも、主に強化刺激(水)を通じて広まった。
P57:サルはもともと道具を使用しないので、サルのミラーニューロンは精密把持とペンチを握ることの間に決定的な線を引く。
P58:F5野外側部ミラーニューロンの約20%は道具を用いてなされた行動の観察に反応した。このF5野外側部の20%ミラーニューロンは、人間の実験者が道具を使用するところをサルに見させ続けた結果と考えている。ミラーニューロンは新しい特性を獲得できる。
P63:サルは自分が「模倣されている」ことに気付く。
第2章 サイモン・セッズ
P66:スーザン・ブラックモア『ミーム・マシーンとしての私』
P67:アンドルー・メルツォフの「生後41分の赤ん坊が模倣」−ピアジェ派は赤ん坊が「模倣を学習する」と暗に言っていた訳だが、メルメルツォフのデータを解釈すれば、赤ん坊は逆に「模倣によって学習する」ことになる。
P71:非常に活発なミームのよい例が「都市伝説」
−リゾラッティの研究室でヴィットリオ・ガレーゼがコーンアイスを舐めているときにマカク脳に発火した−←これも都市伝説。
第3章 言葉をつかみとる
P111:バブキン反応
パトリシア・グリーンフィールド
イシュトヴァン・モルナール=サカーチ
P116:経頭蓋磁気刺激=TMS→画像誘導TMS
P119:「身体化された認知」、「身体か化された意味論」
P122:リサ・アジズ=サデ 「言語機能は肉体に本質的に結びついているもの」
P126:全ての会話は共通の目標を持った協調活動であり、ある意味では、新しい言語の進化をその場に再現していると言えなくも無い。会話の中の一部の言葉が、お互いの暗黙の了解によって決まった特定の意味を帯びていると言うこと自体、模倣と刷新の相乗効果でコミニュケーションが形成されていくことを示したものだと言える。この考えを裏付ける最も驚くべき実例が、「ニカラグア手話」
マイケル・トマセロ
P132:・・・発話音は音として理解されるというよりも、むしろ「調音ジェスチャー」として理解される。−つまり、話すのに必要な意図された運動計画として理解される。→「音声知覚の運動指令説」−私たちの脳は話をしている自分自身をシュミレートすることによって他人の発する音声を知覚している。
第4章 私を見て、私を感じて
P141:ポーラ・ニーデンタールの観察者が歯の間に鉛筆を咥えて他人の表情を読む実験
P145:「容貌の類似度が高くなる」→ジョナサン・コール「顔の喪失の結果」
P156:・・・私たちの脳は観察された他人の苦痛経験の完全なシュミレーションを−運動の部分まで含めて−成り立たせる・・・
第5章 自分に向きあう
P163:手からの感覚情報を受け取る「頭頂弁蓋」は模倣している時の方が高い活性化が見られる。
P167:幼児の脳内のミラーニューロンは自己と他者との相互作用によって形成される。
P169:ゴードン・ギャラップ−チンパンジーの額にマークを塗って鏡に向かわせた。
P174:霊長類とイルカとゾウの自己認識能力は収斂進化か?
『うぬぼれる脳』
P185:「鏡微候」
第六章 壊れた鏡
P200:ユーゴー・テオレー「μ律動(ミュー波)」
P208:1990年代始め頃にその分野で圧倒的な支持を得た「理論説」で持ち出された「誤信念課題」の問題点・・・自閉症の診断が下されるのは一般に二歳から三歳の間であるが、定型発達児でさえ、四歳になるまでは誤信念課題に常に正答できるわけではない。自閉症の二歳児とそうでない二歳児がともに誤信念課題に正答できないのなら、これを自閉症の判別テストとは見なせない。
P210:・・・自閉症児の問題点は認知と「理論の組み立て」の不全ではない。感情的な繋がりを失っていることが問題なのだ。
P215:自閉症患者は頭頂葉ミラーニューロンと側頭葉ミラーニューロン間の神経コミュニケーションが停滞している。
P218:症状が重い自閉症の被験者ほど物体への固視が強かった。対照的に、社会的適応度が高いほど、自閉症の被験者は観察している人の口を−目ではなく口だが−見ていることが多かった。
P222:「常同的な衒奇的運動」
第七章 スーパーミラーとワイヤーの効用
P228:ミコス・ロゴテティス:頭蓋内電極とfMRIの両方で同時に細胞単位での記録を取ることに成功した。
P234:片頭痛の原因としては「神経説」を支持する。
P235:イツァク・フリード
P239:「おばあさん細胞」「ジェニファー・アニストン細胞」
P245:アブ・ディクステルホイス「・・・模倣は私たちを変える事ができる。」−大学教授とフーリガンを想って試験に臨むと結果に違いが・・・
P247:スーパーミラーニューロンは「眼窩前頭皮質、前帯状皮質、前捕捉運動野」にある?
第八章 悪玉と卑劣漢−暴力と薬物中毒
P254:実験室研究、相関研究、長期研究の結果は全てメディア暴力が模倣暴力を誘発するという仮説を裏付けている。
P255:・・・ミラーニューロンは私たちにそうと気づかぬまま自動的に模倣を行なわせており、その結果、私たちは強力な社会的影響によって自主性を制限されている。
第九章 好みのミラーリング
P267:・・・妥当なことを言うべきだという社会的圧力は、往々にして本音を上回る。
P270:選択盲でないのは10人に1人
P273:腹側線条体と内側眼窩前頭皮質報酬系に属する脳領域− 男性の自動車マニアは魅力的な女性を見るときと同じ脳の反応の仕方でスポーツカーを見る。
P276:「ペプシチャレンジ」・・・被験者が(コーラ飲料)ブランド名を知っているときに活動が高まる領域は「背外側前頭前皮質」、ブランド名が条件に入ってくると背外側前頭前皮質が内側眼窩前頭皮質の活動を抑え込んでしまう。内側眼窩前頭皮質は味を査定する中心部ではあるが、ブランド名の情報が入ると通常の査定はできなくなる。
P291:「中傷広告」:1964年大統領選ゴールドウォーター側に対するリンドン・ジョンソンの広告と1988年のデュカキスに対して使われたH・W・ブッシュ側の「回転ドア」・・・投票理由について世論調査員や出口調査員になんと言おうと、結局は怒りや恐怖に従って投票しているのだと、この世界では看做されている。
P295:・・・自分の支持する候補者を見ている間、内側眼窩前頭皮質を活性化させていた。
第十章 ニューロポリティクス
P301:ジョン・ザラーとスタンリー・フェルドマン→「政治通と政治初心者との違いは、主に専門知識のレベルの違いから生じる認知力の違いである」
P308:事情通と初心者の乖離をはっきりと実証していた領域は、楔前部と内側前頭前皮質の二つ。これらの領域は「デフォルトモードネットワーク」と呼ばれる神経系に属している。事情通はこの領域が活性化されるが、初心者は認知を働かせるのでデフォルトネットワークの活動が停止してしまう。
P310:アラン・フィスク「集団内の共有」「権威の序列」「平等な調和」「市場の価格設定」
P314:ミラーニューロンが自己と他者との身体的な側面を担当しているとすれば、デフォルトネットワークは自己と他者との関係の、もっと抽象的な側面を担当しているに違いない。それは各人が属している社会やコミュニティで、各人が果たしている役割である。
第11章 実存主義神経科学と社会
P330:「動かされる」
P331:私たちを繋ぎ合わせる根本的な神経生物学的機構を絶えず否定する巨大な信念体系−宗教的なものであれ政治的なものであれ−の影響がある限り、真の異文化間の出会いは決して望めない。