階級にとりつかれた人びとー英国ミドル・クラスの生活と意見
P3:”ロウアー・ミドル・クラスよ頭をたれよ!商人よ、大衆よ、頭をたれよ!”(W・S・ギルバート『アイオランシ』第一幕)
P24:ヴィクトリア朝の観客席:ボックス席は上流・社交界のリーダー、平土間は商人や学生・法律家、天井座敷は使用人・奉公人・職人
P36:「かわいそうなヴィッキー(女王の長女)はあいにくスズメバチの巣の上に座ってしまい、かなり刺されました。 ー中略ー 素晴らしい一日でした!」(ヴィクトリア女王スコットランドの生活記録、1848年−1861年』)
P57:「デイリー・メール」
P60:「デイリー・ミラー」:ハームズワースにとっては不本意な「大衆路線」を辿り、ゴシップやスキャンダル記事を載せたこの新聞は現在のタブロイド紙のはしり。
P63:新聞(大衆紙)をすみからすみまで読む「シャーロック・ホームズ」はミドル・ミドルおよびロウアー・ミドルの読者にとって安心できるインテリで親近感を抱けるヒーローだった。:ジョン・ケイリーは『知識人と大衆』の中で大衆向けの新聞が「インテリ」を「一般大衆」から分ける断層線になり、インテリは新聞を好まず、新聞読者を「無教養な大衆」として馬鹿にしていたことに触れている。
P70:セルフリッジはロウアー・ミドルを主な顧客層として出発した:”お客様が手袋を14枚試着して、結局一枚も買わなかったとしたらーそれでもいっこうに構わない”(『セルフリッジ』)
P73:英国では「カントリー」というと「上流階級の領地と邸宅、素朴に美しい村」と高級感のある良いイメージが伴う。「タウン」といえば「ロンドン、都会、社交界、娯楽、刺激」とポジティヴな連想をもたらす。
P80:T・W・H・クロスランドー1905年『郊外の人々』
P82:T・W・H・クロスランドー1904年『日本に関する真実』
(第5章 ロウアー・ミドル・クラス内の近親憎悪)
P90:アッパー・クラス及びアッパー・ミドル・クラスそれからワーキング・クラスは各自のコミュニティへの帰属意識は極めて強い。ところがロウアー・ミドル・・クラスはいたって「孤独な存在」なのである。
P105:「家庭を大事にする」、「現状に満足して野心を持たない」という美徳がロウアー・ミドル・クラスのものとして揶揄の対象となっていた。
『運命の車輪』
P115:『宇宙戦争』の意図された読者の大部分はホームズやジェローム・K・ジェロームの「プーター氏、キップス、ポリー氏」で、破壊されるのは彼等の住む「郊外=サバービア」。ウェルズの「劣等人種」を抹殺する優生学的思考が、自身の出身階級である人々の美意識の欠如と大衆的な嗜好にある種の「近親憎悪」を招いた。
(第6章 貴族への憧れ、労働者への共感)
P130:青白い顔をして郊外の家と仕事場を往復するだけの貧弱なロウアー・ミドル・クラスと違って、ワーキング・クラスは強い肉体と強い精神力を持つ、魅力的な存在だった。ロウアー・ミドル・クラス出身の母とワーキング・クラスの父を持つ作家D・H・ロレンスが描いた『チャタレイ夫人の恋人』の猟場番人メローズはアッパー・クラスの精神がワーキング・クラスの肉体に宿った、理想の男性像である。
P134:『マイ・フェア・レディ』の人気の要因は原作(ピグマリオン)に色濃い「ミドル・クラス」の要素が取り除かれていることにある。
P138:イギリス人にとって一番好ましい存在はーアッパー・クラスとワーキング・クラスー:理想の中の「古き良きイギリス」には、ロウアー・ミドル・クラスの「リスペクタビリティ」は存在しない。
P143:ロウアー・ミドル・クラスの特徴:排泄行為、性行為、死など「タブー」な事柄について碗曲表現を使う。
P147:『コレクター』の主人公フレデリックはロウアー・ミドル・クラス、誘拐されたミランダはアッパー・クラス
P157:ロウアー・ミドル・クラスのヒーロー:ヒロイン「メリー・ポピンズ」、ヒーローは完璧な従者「ジーヴス」
P168:実社会でのロウアー・ミドル・クラスのヒロインはマーガレット・サッチャー
P179:ローワン・アトキンソンは「ミスター・ビーン」をミドル・ミドル・クラスと説明している。
P186:マルフォイ=アッパー・クラス、ロン・ウィーズリー=経済的に落ちぶれたアッパー、ハーマイオ=向上心を持ったロウアー・ミドル・クラス、ハリー=エリートの息子でありながら(あるいはかえってそのために)最初は自分の実力にも気が付かない、いたって謙虚な人物として「好ましく」描かれている。
P187:スーパー・クラス=年収40万ポンド強:1995年ベアリング銀行を潰したニック・リーソンはワーキング・クラス出身で、トレーダーという彼の地位は頭取のピーター・ベアリングの言葉を借りると「事務員=クラーク」
P194:”私は小学校ではワーキング・クラスのアクセントで話していて、家では普通の英語を話していたからバイリンガルなの”
日本人が出身を東北・関西・関東、または標準語・方言を話すかに対して抱く感覚と同じようなものを、イギリス人は「階級」に対して持っている。