プルーストとイカ―読書は脳をどのように変えるのか?

プルーストとイカ―読書は脳をどのように変えるのか?

プルーストイカ
P13:奇妙な話だが、前書きは本に対する著者の最後の思いを伝えるものが多い。
P16:”読書の神髄は、孤独のただなかにあってもコミュニケーションを実らせることのできる奇跡にあると思う”マルセル・プルースト
P19:ニューロンレベルで言うと、漢字を勉強している人は、英語を読む時に使う経路とは大いに異なる、実に独特な一連のニューロン接続を使用する。一方、もともと漢字を読む人々が初めて英語にチャレンジする時は、彼らの脳は漢字をベースにしたニューロン経路を使おうとする。
P23:”移入”
P28:基本的計算能=「書字と数量的思考」は”ニューロンのリサイクリング”で初めて達成された。−スタニスラス・デハーネ
P71:"muscle"の発音されない"c"はラテン語源"musculus"に由来する形態素の側面を視覚的に伝える存在。英語も音と語源の妥協の産物。
P48:発話実験:エジプト王(紀元前664年〜610年)プサメティコス1世=プリギュア語のパン、スコットランドのジェイムズ4世=流暢なヘブライ語神聖ローマ皇帝フリードリヒ二世=被験者死亡
P67:シュメール語の話者は紀元前1600年には歴史から姿を消したが、その後も、シンボルと教育方法はアッカド語に引き継がれた。紀元前600年にシュメール語の書字が消滅するまで影響し続けた。
P109:『パイドロス』を信じるならば、書物は積極的かつ批判的に理解する作業を省いて、”知恵があるという誤った思い上がり”を抱いた弟子を作り出してしまうとソクラテスは考えている。−マーサ・ヌスバウム
P110:プラトンの記述が正しければ、ソクラテスは弟子たちを対話法によって指導していたマンネンティア出身の女性哲学者ディオティマの弟子。
P115:6−11
P144:角回領域には5歳〜7歳の学齢期になるまで、ミエリンの十分な発達は見られない。男子の中には重要な皮質領域のミエリン化が特に遅い子がいる。(ノーマン・ゲシュヴィント)
5歳で読み方の勉強を始めた欧州の子等は、7歳から同じ学習を始めたグループに比べて読字能力に劣る。(ウーシャ・ゴスワミ)
P207:米では子供40%が”学習不振児」”−正確に読めても、流暢には読めない(理解が追いつかない)。
P211:”ファンタジーの世界は、むしろ具体的な認知処理の段階を卒業したばかりの子供にとって、概念保持に最適な環境である。”
P217:背側経路→腹側経路(流暢な読字経路):両半球の賦活から左半球の特殊化した領域へ任せてしまう。
P222:エピソード記憶意味記憶宣言的記憶と手続き的記憶、作業記憶と連想記憶
P224:キース・レイナー:サッカードにより、「傍中心窩領域」から行に沿って周辺領域まで”先読み”する。英語で右へ14〜15字、ヘブライなら左に同数先を見ている。
P229:ドイツ語、イタリア語のように規則性の高い言語の読み手は、英語よりもはるかに一貫した文字と音の対応の規則をさっさと習得し、解読の過程を一年近く短縮してしまう。
P243:脳右半球の言語システムは読字発達の過程で激変し、左半球の言語野に劣らぬ拡張性を獲得して、広く分布している。最終的に熟達した読み手の場合、左右両半球のブローカ野に加えて、右角回を含む複数の側頭・頭頂領野と右小脳の関与が増大する。
P254:1870年代、アドルフ・クスマウル、”語盲”、ジョゼフ・ジュール・デジュリン、”ムッシュX”
P256:ノーマン・ゲシュヴィント、”離断症候群”、1921年、ルーシー・フィルズ、”読字障害者は文字の聴覚イメージを形成できない”、1944年、パウル・シルダー、”話し言葉を音に分解できない”、イザベル・リーバーマン&ドナルド・シャンクワイラー
P259:フランク・ヴェルティノ、”反転文字の対(b,dやq,p)で、音を表わす正しい言語ラベルを検索できない”、個々の音節と音素を知覚・分割が困難である。
P263:ピーター・ウォルフ:構成音素を正確かつ迅速に接続する必要に迫られると、知覚処理のレベルでなく、運動機能や目、耳のレベルで破綻をきたす。
P264:ツヴィア・ブレズニツ:視覚プロセス聴覚プロセスの間に”時間のギャップ=非同期性”がある。
P265:マーサ・ブリッジ・デンクラ&リタ・ルーデル:高速自動命名
P270:最も強力な接続が「37野」でなく、「左側頭−頭頂野と右半球の前頭野」の間に生じる。加えて、順調な読字初心者が頼りにする「左角回」が、読字障害者では読字中と音韻情報の処理中に、左半球の他の言語野と機能的に接続されていない。脳磁気計測(MEG)で読字時の脳の賦活を追うと、左右の後頭葉の視覚野から右角回を経て、前頭野の順に賦活しており、普通者とは全く別の読字回路を使っている。
サミュエル・オートン&アンナ・ギリンガム:”象徴倒錯症”、”半球優位性が生じていないか、著しく遅れている”、”両耳分離聴課題では右半球優位”、”視覚野の働きが左右対称であるうえに、左半球が言語処理を驚くほど苦手としている”
P276:図7−8
P293:レオナルド・ダ・ヴィンチの膨大なノートにある”鏡文字”には綴り違い、統語ミス、奇妙な言語の間違いが山ほどあった。彼は彼の為に語る朗読者を必要としていた。
P298:アインシュタイン:自分の論理的思考は”ほぼ鮮明なイメージ”として浮かんでくるから、言葉なんて、”何の役にも立たない気がする”:彼の脳は頭頂葉が異常に発達していて、普通なら非対称のパターンを示す左右脳半球が思いがけず「対称」になっていた。
P294:医学分野では放射線科は有望、金融:ポール・オルファレア、チャールズ・シュワブ、”建築士の書簡は二度スペルチャックしないと出せない。”
アントニオ・ガウディ
P304:DCDC2、ROBO1
P334:”目の前に二つの選択肢があるなら、たいてい三つめもあるものだ”
P373:岩田誠・河村満編『神経文字学』:仮名は音韻経路(背側経路)、形態経路(腹側経路)の両方で処理され、漢字は主に形態経路で処理される。
P376:米15%、筑波大・宇野彰:書字障害=かな2%、カナ5%、漢字7〜8%
M・S・ガザニガ『人間らしさとは何か?』
S・ブレイクスリー『身体脳』
D・J・リンデン『つぎはぎだらけの脳と心』
G・スタイナー『言語と沈黙』