ミトコンドリアが進化を決めた

ミトコンドリアが進化を決めた

ミトコンドリアが進化を決めた
P4:(現在、米英では禁止)健常ドナーの卵細胞中のミトコンドリア不妊の卵細胞に移植する「卵細胞質移植」で生まれた子は30人を越える。
P5:「ミディクロリアン」←ミトコンドリア
P21:リン・マーギュリス:1967年6月『理論生物学ジャーナル』
P32:「飛行」は「昆虫、翼竜、鳥、コウモリ」で4回、「目」は40回も独立に進化を遂げ、どの場合も限られた設計仕様に従っている。
P37:クリスティアン・ド・デューヴ『生命進化』 ”真核生物の誕生は、進化のボトルネック(隘路)だったか?”
P39:硫酸塩を硫化水素に還元する「硫酸塩還元細菌」は、メタン生成菌との水素ガス争奪戦に常に優位だったが、硫酸塩が無い場所でメタン生成菌は生き残ってきた。硫黄化合物の少ない草食から肉食に切り替えると、腸内で硫酸塩還元細菌がメタン生成菌に取って代わるのが判る。
P41:1940年、リヒャルト・ゴルトシュミットー「ポープフル・モンスター(有望な怪物)」
「C値のパラドックス
葉緑体←シアノバクテリア
P52:トム・カヴァリエ=スミス
P54:ペニシリン様の抗生物質古細菌細胞壁の合成を阻害せず、これは細胞壁が細菌同士の化学戦の「標的」だったからか?
P55:古細菌遺伝子の30%は固有
P58:「アーケゾア」=Mの無い真核生物
微胞子虫類→V・ネクトカリス、ノセマ
P62:20億年前の全球凍結後の大気中酸素濃度上昇の時にMの存在が確立した。
シブ・アンデション(1998年)ーリッケチア・プロワゼキイの遺伝子群はヒトMのものに近似
P63:奇生体の弱毒化:梅毒、エイズ、アメーバ・プロテウス→致死性の細菌がやがて宿主の生存に不可欠な存在になる。
奇生体から奴隷へ:
シブ・アンデション「オクス・トクス=酸素毒」仮説ー酸素濃度上昇の時に、好気性細菌のゲストが嫌気性宿主を酸素から守った可能性。
P67:1995年以降「アーケゾア」はかつてMを保持していた。
P69:最初の真核細胞は「メタン生成菌」と「α−プロテオバクテリア」の融合の産物←共生には甚だ不合理に思える。
(水素仮説)
P74:ミトコンドリアと「ヒドロゲノソーム」の共通祖は両方の代謝(酸素呼吸と水素生成)機能を実行できたろう。
P76:「嫌気性ミトコンドリア」=酸素を使って食物を燃やす替わりに硝酸塩や亜硝酸塩などを使う。
子孫は分化するうちに単純かつ合理的に「退化」する。
P79:リッケチアとミトコンドリアの好気性は「収斂進化
P80:図4(水素仮説)−「好気・嫌気両呼吸の細菌」と「メタン生成菌」ー細胞の協力→代謝にもとづく共生→キメラ状の原真核生物
P84:ブドウ糖の奪い合いの解決に「α−プロテオバクテリア」は自身の遺伝子の多くを「メタン生成菌」に譲り、メタン生成菌がブドウ糖を発酵させて、その分解生成物をα−プロテオバクテリアが使えるようになる。→遺伝子の水平移動、ATPポンプ
P87:2002年、エアリアル・アンバーとアンドルー・ノール:
”大気中酸素濃度の上昇と共に、海中の硫酸塩濃度も上昇し、硫酸塩還元細菌が急増すると、競合に敗れた最初期の真核生物の原型は、酸素呼吸の遺伝子を失う前に、酸素の豊富な表層水に追いやられた”←海洋成層(現存例は「黒海」で、表層は酸素、深層は硫化水素に満ちている)
プロトン・パワーと生命の起源)
P92:”(ヒトは)1グラムあたり(2m j/g/sec)で見れば、ゆったりと座っているときでさえ、毎秒太陽(0.2μ j/g/sec)の1万倍も多くのエネルギーを変換している” 太陽は100億年かけて1g当り[6000万k ]を生むが、全質量の[2*10^30 kg]で割ると[0.0002m w]
アゾトバクター(窒素固定細菌)は太陽の5000万倍になる10ジュール毎グラム毎秒
「化学浸透圧説」「プロトン駆動力」
(呼吸の意味)
P99:”ブドウ糖の酸化は、ブドウ糖から酸素への、2個の電子と2個のプロトン−合わせて水素原子2個分−の移動と同じものと見なせる”
「呼吸色素」チャールズ・マクマン→「シトクロム」ダヴィド・ケイリン→「呼吸酵素」オットー・ヴァールブルグ”呼吸は光合成以前に発達した”
ルイ・パストウール→エドウアルト・ブフナー→サー・アーサー・ハーデン、ハンス・フォン・オイラー=ケルピン→オットー・マイヤーホーフ→カール・ローマン→ウラジーミル・エンゲリガルト→セベロ・オチョア”ブドウ糖1分子から38分子のATP”
P110:ヒトの場合ATPは1秒当り9×10^20分子の率で生成されており、1日で65kgの回転率(ATPが生成と消費される率)となる。
P111:ATP〜ADPの「平衡」:ATP → ADP + P + Energy、ADPに比べてATPが遥かに多くある
「共役反応」、「脱共役剤」
エフライム・ラッカー”まるっきり混乱していない人は、問題がわかっていない”
プロトン・パワー)
ピーター・ミッチェル 「能動輸送」、「膜のポンプが濃度勾配をつくったら、勾配そのものが原理上、原動力として働く」
P119:1961年「化学浸透共役」−ミッチェルにとっての化学浸透とは濃度勾配に”逆らって”膜を通過するように分子を押すこと−
(生命の起源)
「RNAワールド」−RNA→DNA&タンパク質、クリスティアン・ド・デューヴ『生命進化』
”リボザイムは最初の触媒としては無機物(補欠分子団)よりもずっと不適だ”
”発酵は膜を超えてプロトンを汲み出さない点で呼吸や光合成と異なる”
”「原始スープ」の発酵だと、小惑星の衝突が40億年前に下火になった後、発酵可能な有機物の供給が途絶えた筈”−38億年前の生命誕生から(35〜27億年前)光合成までの間に養分が持たない。
「還元可能な複雑さを持つ」エネルギー生成手段
『生と死の自然史−進化を統べる酸素』
P137:LUCA(既知の全生命の最後の共通祖先)は、今日知られている様な発酵は行えなかった。
2002年、ビル・マーティンとマイク・ラッセル−LUCAは無機質の膜(鉄硫黄化合物の泡状の薄層)を持ち、有機分子の詰まった細胞を包んでいた。LUCAの子孫は、後から独立に脂質の膜を造った。鉄硫黄化合物は生命史上最初の有機反応の触媒となって糖とアミノ酸ヌクレオチドを生み出し、ついには「RNAワールド」まで登場させたかもしれない。
グンター・ヴェヒターズホイザー、1980年後半から90年代−鉄硫黄化合物が二酸化炭素を還元する触媒となり、有機分子を生み出して生命誕生を促した−
↑生命の前躯体は化合物結晶の表面で反応を終えると、表面から離れて海に拡散する。無機物表面の決った場所で流体の生化学反応サイクルが進行するとは考え難い。ビル・マーティン&マイク・ラッセルの代替案は「火山性の湧水地点」→アラン・ホールは硫化ナトリウム水溶液(熱水流体を模す)を塩化鉄水溶液(原始の海)に加えて、硫化鉄の膜で繋がった泡を作った。ヤーゲンドルフ&ウリベの実験では膜をはさんでPH差がだけで、ATPが生成できた。ラッセルの「細胞」には自然にPH勾配が出来るので、ATPを生成するには、膜に「ATPアーゼ」を埋め込むだけでよい。
P144:原始の地球は、電気化学反応を起こす巨大な「細胞(=電池)」で、太陽光を利用して海を酸化していた。紫外線が水を分解して発生した水素は地球に飛び出し、海中の鉄は次第に酸化され、一方でマントルは相対的に還元された状態になる。
(内部取引)
P148:進化生物学者が思わず”コーヒーを吹きこぼす”言葉に「目的、目的論、複雑さの上り坂、非ダーウィン的」がある。←大いなる「存在の鎖」
ジャック・モノー『偶然と必然』
P154:コンスタンティン・メレシコフスキー:図9「生命の系統樹
P158:環境・資源が無尽蔵に与えられるなら、大腸菌は20分に1回、1日に72回分裂して[2^72]倍になるから重さ4000トンになる。2日で地球質量(5.977*10^21トン)の2664倍になる。大腸菌細胞分裂速度は、中のDNA複製速度(40分)を上回る。DNAの複製よりも細胞分裂が速いため、細菌に可能な分裂速度は、DNA複製速度の制約を受ける。
P161:細菌は自分の遺伝子でギャンブルをしてはよく負けて遺伝子を失う。→リッケチア
P163:シヴ・アンデション”ゲノムの塩基配列は進化の時間的・空間的なスナップショットに過ぎない”
P166:一部の細菌の種では、個体群の中にみられるバラツキの90%以上が、遺伝子の水平移動に由来。
淋菌は遺伝子の組み換えが速すぎてクローン集団を全く見出せない。
P168:細菌には「遺伝子の欠失の傾向」と「水平移動による獲得の傾向」がある。
P169:アメーバ・ドウビアは6700億字(ヒトの200倍)
P175:真核生物は大きくなっても細菌のように呼吸効率が低下しない。エネルギー効率を高めるには、真核細胞は細胞内ののミトコンドリア膜の表面積を増加させればよく、ミトコンドリアをいくらか増やせばよい。
P177:細菌は細胞壁をなくせるが、食作用を身につけられなかった。
P178:ニトロソモナスやニトロコックスは複雑な内膜系があり、真核生物の「見かけ」をしている。
P183:ヒト細胞核に354のミトコンドリアDNAの独立した遺伝子移動があった。
P184:2003年クレッソン・ターナー細胞核ミトコンドリアが自然に移動して「パリスター・ホール症候群」になった症例を報告。
遺伝子のラチェット(反転不能の歯車)−
P186:宿主細胞が生成したタンパク質を細胞内の特定の場所へ導く能力を失った可能性がある。
P188:最初の真核生物は単細胞の菌類のように、消化酵素を周囲に分泌して食物を体外で分解していた可能性がある。
P193:ミトコンドリアの存在意義=呼吸:ミトコンドリアの膜で起きる酸化還元反応は、局所的な遺伝子によって厳密に調節する必要がある。
(平衡の問題)
「酸化還元平衡」
P198:100個中のあるミトコンドリアある1つに十分なシトクロム酸化酵素がないと、電子が呼吸鎖で滞留し、フリーラジカルとして漏れ出る。これが、シトクロム酸化酵素の不足シグナルと解釈されて酵素が造られたとき、100個のミトコンドリア全てに分配されてしまう。酵素を余分に受け取った99個が「シトクロム酸化酵素の生成を止めろ!」と核にメッセージを返すと、ミトコンドリアは呼吸の制御を失い、フリーラジカルを多く生成する。呼吸を制御できないと、細胞を維持できるミトコンドリアの数はかぎられてしまう。
逆に、シトクロム酸化酵素の遺伝子がミトコンドリアに残っているとすると「シトクロム酸化酵素を造れ!」のシグナルが、その場の遺伝子集団に到達するだけで済む。
P202:電子を流す必要の無い細胞小器官はそのゲノムを失う。→ヒドロゲノソーム
P204:全く違う細胞同士が化学的に依存関係を結び、これが長く続いたことで「ATP運搬体」が進化できた。ところが、細菌が自然選択だけで進化する場合、そうした安定性は存在しない。ただ遺伝子セットを複製して膜の中に封じ込めるだけでは、本質的に何のメリットも提供しない。選択圧は常に、細菌で大面積の膜による呼吸の制御に必要な遺伝子を、邪魔者として棄てる。
P209:「惑星が太陽のまわりを回るように、電子は原子核のまわりを回る」というのも視覚的印象の強い表現だが、この表現は量子力学という突拍子もない謎を、長いこと覆い隠してしまった。進化は胚発生に近いと考えると、進化に予見はないという事実が覆い隠されてしまう。進化はプログラムの役目を果たせないのだ。
P210:S・J・グールド「酔っ払いの千鳥足」:最も単純なニッチ(生育環境)は既に細菌が占めていたから生命が進化できたのは、複雑さを増す方向だけだった。複雑化は環境に与えられた可能性に応じたにすぎなかった。
P212:「コープの法則」はまやかしにすぎなった。大型生物に夢中になって、小型生物を見過ごした。
J・B・S・ホールデーン『適切なサイズについて』ー「高等動物は下等動物に比べ、より複雑だからより大きいのではない。大きいからより複雑になのだ。・・・・比較解剖学は主に、体積に対する表面積の比を増やそうとする努力の歴史を明らかにするのである」
(生物のべき乗則
P220:1883年、マックス・ルーブナー:(犬)代謝率が体重の「2/3」乗に比例する。(代謝率の対数が2目盛増えるごとに、体重の対数は3目盛増える)
動物のサイズが増すにつれ、代謝率は、体重に対する表面積の比に相当する割合で減っていく。
P222:スクラバーの法則、マックス・クライバー、サミュエル・ブロディ:代謝率が体重の「3/4」乗に比例する。(代謝率の対数が3目盛増えるごとに、体重の対数は4目盛増える)「4分の1単位の指数のスケーリング」
P232:アルフレッド・ヒューズナー→ピーター・ドッズ&ダン・ロスマン&ジョシュア・ウェイツー「4分の1単位の指数のスケーリング」には説得力が全く無い。
P236:チャールズ・ビショップ:「0.88」ー代謝率が4目盛進むごとに、体重は5目盛増える←フラクタルのモデル予測値の「0.75」と一致しない。
P239:骨格筋のパワーや代謝率は、体のサイズに関係なくすべての哺乳類でおおよそ近い。
P240:筋肉、脳、腫瘍でも、毛細血管の密度は組織の需要で決まり、フラクタルなネットワークの性質によらない。酸素が足りなければ、組織はただそれを求めるだけ、すると毛細血管のネットワークが、新たに供給する血管を増やして要求をかなえる。
動物界全体で組織の酸素濃度(分圧)は平均3〜4キロパスカルで、大気中酸素濃度の3〜4%に当る。酸素が速く消費されるときは「流量」を上げる。
天路歴程』、『新科學対話』
(温血革命)
P250:あらゆる生化学反応は、温度に左右される。温度10度上がるごとに、代謝率は2倍になる。これと同時に、あらゆる生物種の有酸素能は、体温上昇と共に向上する。したがい、スピードと持久力は体温が高いほど向上する。
爬虫類に必要な燃料は哺乳類比で環境が20度の場合は「2〜3%」、10度では「1%」、ただ保温に使うだけで哺乳類は爬虫類の「30倍」かかる。
P251:トカゲに毛皮を着せると、環境からの熱吸収が妨げられる。
1979年、アルバート・ベネット&ジョン・ルーベンの「有酸素能」仮説:自然選択の目指すものはスピードと持久力、最大代謝率と筋肉の能力であって、安静時代謝率と体温ではなかった。この仮説では、安静時代謝率と最大代謝率は直結していて、有酸素能が高くなるような選択は、必然的に安静時代謝率の上昇をともなう。
安静時代謝率が上昇する段階では、体内で生成した熱の維持を目指す選択が、皮下脂肪、毛皮、産毛、羽毛など断熱層の進化に有利に働く。
P254:トカゲが疲労回復に時間がかかるのは、筋肉よりもむしろ肝臓や腎臓による。代謝に拠る老廃物や分解生成物の処理に依存。
トニー・ハルバート&ポール・エルス:哺乳類の臓器にはトカゲの5倍のミトコンドリアがあるが、ミトコンドリアがもつ呼吸酵素の効率は全く同じ。
プロトンの漏出)
P256:プロトン勾配の解消(脱共役)でフリーラジカルによるダメージが抑えられる。安静時の哺乳類では、プロトン勾配の4分の一が熱の形で解消される。
(殺人か自殺か)
P277:細胞周期を調節するがん遺伝子とがん抑制遺伝子の2種類に8個から10個の変異が蓄積して悪性細胞になる。
P279:がん細胞は自然選択によって進化を遂げる。
P283:脳部位によっては発生初期に形成されたニューロンの80%以上が、誕生までに消える。細胞死のおかげで、脳の「配線」は極めて精密になる。体は足し算ではなく「引き算」によって形成される。
線虫「C・エレガンス」、「カスパーゼ」
(死の天使ミトコンドリア
P292:Mの内膜が脱分極を起こし、フリーラジカルの生成によってシトクロムCが細胞質ゾルへ放出されると、細胞を切り刻む酵素が働きだす。
P296:アポトーシスは「他殺」
AIF(アポトーシス誘導因子)だけは例外だが、Mから放出される既知のアポトーシス関連タンパク質はすべて「細菌由来」で、古細菌に由来しない。(P68参照)
デロビブリオ、リッケチア・プロワゼキイ←Mの祖先の候補
「ポリン」
有性生殖と死の起源)
P313:宿主細胞がエネルギーが十分にあるのに成長・分裂できないと、その中のミトコンドリアフリーラジカルで、細胞核のDNAを攻撃する。
P318:有性生殖が一般に死刑をもたらすなら、・・・これが生殖細胞を隔離する強力な選択圧となったのだろう。・・・ひとたび生殖細胞の隔離が確立すると、多細胞の個体は有性生殖でしか複製できなくなった。・・・皮肉なことに、最終的に多細胞の個体を生み出した、個々の細胞間の長い闘争が、別のもの(=遺伝子)に勝利の栄冠を与えた。
(両性の闘い)
P322:女性の6万人に1人はY染色体を持つ。→XYの女性、1985年西班牙60mハードルのマリア・パティノは「男性ホルモン不応症」
オリンピック女性選手の500人に1人はY染色体保持者で、モデルや女優にも多い。男新生児500児に1人はXXY。
モグラレミング=エロビウス・タンクレイ、エロビウス・ルテスケンス」
鳥類雄がZ染色体2本、雌がWとYを各1本
「プセウドビケロス・ベドフォルディ」、ニコ・ミヒールス
(片親遺伝)
スエヒロタケには28000の交配型「不和合性」
アオサ=ウルヴァ、クラミドモナス・レインハルディ
レダ・コズミデス&ジョン・トゥービー
「細胞質雄性不稔」、「ヘテロプラスミー」
ミトコンドリアの組み換え)
P353:「ホモプラシー(成因的相同)」アダム・エア=ウォーカー&ノエル・スミス&ジョン・メイナード・スミス
P356:1991年にニコライ二世の遺体は「ヘトロプラスミー」だったので生存親族と一致せず、ニコライ二世の実弟ロシア大公ゲオルギー・ロマノフの遺体を掘り起こし、弟もまた「ヘテロプロスミー」だったので確認できた。
人類の「10%〜20%」はヘテロプロスミー、大半は父親のミトコンドリアDNAの侵入に拠らない、新たな変異が起こる。40〜60世代毎=800〜1200年毎に1つの変異が起きる。
P359:フランシス・ゴールトン『遺伝的天才』(邦訳「天才と遺傳」):姓の平均寿命は200年、中世イギリスの世襲の称号は平均3代しか存続しない。オーストラリア1912年国勢調査では子供の半数が、男性の9分の1、女性の7分の1に相当する人の血を引く。
ジム・カミングスー集団の中で生殖能力に隔たりがみられることで、大多数のの血筋は途絶える。
P360:レイク・マンゴー人骨は徹底的な層序学的解析のもとで化石年代を4万年前に短縮された。
P363:プロトン勾配はATPの生成か熱生成かの二者選択を迫られる。
P364:(P256)体内の熱生成を増やせば、安静時のフリーラジカルの生成が抑えられ、反対に体内の熱生成を抑えれば、安静時にフリーラジカルが生成する危険は高まる。
P365:精子ミトコンドリアが熱としてエネルギーを浪費してしまうと精子の運動性が低下する→「精子無力症」はハプログループ「J(南欧タイプ)」より「T(北欧タイプ)」に多くみられる。ミトコンドリア遺伝子は自然選択を受ける。
(なぜ性はふたつあるのか)
P371:M遺伝子と核内遺伝子が同調して「共適応」するのは不可欠:呼吸不全を起こす細胞はアポトーシスされる。
ミトコンドリアボトルネック
P377:1度に産む子の数が少ない種ほど、ミトコンドリアボトルネックが細く、発生の過程で間引かれる卵母細胞が多い。
P378:卵母細胞が核内遺伝子に対するミトコンドリアの能力試験場であることが明らかになれば、核とミトコンドリアがピッタリと適合するように「二つの性」が存在する証拠になる。
(生命の時計)
P380:オウム100年、アホウドリ150年、カモメ70〜80年見て判る明白な老化の兆候はない。
P389:デナム・ハーマンの抗酸化物質が寿命を延ばす効果は全くない。
ジョン・ガターリッジ&バリー・ハリウェル「1990年代には、抗酸化物質が老化や病気の万能薬ではないことははっきりしていた。代替医療だけが、この考えを広めているのだ」
P390:実は抗酸化物質の量と寿命の間には負の相関がある。抗酸化物質の濃度が濃いほど、寿命は短いのである。
P392:鳥類は呼吸鎖からのフリーラジカルの漏出が少ないから、抗酸化物質を多く必要としない。
ミトコンドリア病ATPが必要ないときでも、ミトコンドリアがフル稼働で呼吸していた。大食いなのに痩せている。
フレデリック・サンガーミトコンドリア病は5000人誕生に1人
カーンズ・セイヤー症候群、ピアソン症候群
P404:一部の哺乳類でも、重要な遺伝子に点突然変異(1塩基の変化による突然変異)が1度起きるだけで、寿命を大幅に延ばせるのがわかっている。
P407:ジュゼッペ・アッタルディ:M-DNA「調節領域」における1つの変異が、実際にイタリア人の集団で「長寿」と関係している。
P415:「逆行性応答」
(老化を治す?)
P431:グスタボ・バルハーフリーラジカルの漏出は呼吸鎖でも特に複合体?で発生する。漏出を阻止するにはこの複合体を高い精度で狙う必要があるが・・・抗酸化物質を十分な濃度でこの狭い領域に届けるのは不可能。一個のミトコンドリアには何万もの複合体がある。
P432:田中雅嗣ー日本人のみだが、複合体?のあるサブユニットのコードが1塩基の違いで100歳まで生きられる可能性が50%と高くなる。
「運動のパラドックス
P437:長寿遺伝子の代償は、通常、性欲の減退として現れる。鳥類にはこの欠点はない。
P438:鳥は休んでいるときも、アイドリングを続け、かなり能力過剰の状態にある。複合体?があまり減らない。コウモリも同様。
ハチドリの腸にあるブドウ糖運搬体の数は、哺乳類よりもはるかに多い。
ミトコンドリアの密度が高いと、安静時の余力が大きくなり、複合体?の還元状態は低くなる。するとフリーラジカルの漏出は必然的に減り、これが長生きにつながる。
P447:呼吸鎖は僅かにひびの入った配水管、詰まるとひびから噴出しやすくなる。
(解説)
P468:老化の本質は、生体の予備能の低下である。老化に伴う細胞数の減少を、個々の細胞の肥大によって代償しようとするが、臓器・組織は萎縮し、機能低下に陥る。
P471:日本の「きんさん・ぎんさん」ミトコンドリアゲノムのDタイプ保持者は100歳を越える確立が1.5倍に増える。2007年にはメタボリック症候群や2型糖尿病に関連する多型が明らかになった。
「高齢者よ、テレビを捨てて街に出よう!」