「集団主義」という錯覚―日本人論の思い違いとその由来

「集団主義」という錯覚―日本人論の思い違いとその由来

集団主義」という錯覚
ガンホー
P28:1950年代の暴力行為を伴うデモは仏の倍多い。江戸期300年の農民一揆は1600件。WW2以前20年間の小作争議は平均して年3200件。
『日本人論の方程式』
「自己観理論」
P52:ホスホーデの誤り:「因子」の解釈を誤っている。
ソロモン・アッシュの(対象アメリカ人学生、赤狩りの真っ最中)「同調行動」実験での同調率は37%、ロバート・フレイジャーの(日本人学生)実験結果は25%、追試のを含めた平均値は「米25%、日23%」
P62:山岸俊男の出資ゲーム「協力行動」実験結果は米が出資金の56%、日は44%。罰金を加味すると米方の協力行動は強まるが、日は非協力に変化無し。
P77:「リカート尺度」、「準拠集団効果」
P99:「日本語には、他人から厳然と区別された『自己』の存在を示す特徴がある」
「心理述語」
敬語は、日本語の本質的な要素ではない。宮廷のあった京都で発達し、それが「標準語」に受け継がれた。
P112:北欧60年代、英国80年代、独逸90年代に「いじめ」が社会問題になっている。
P115:アメリカの研究者たちは、米国の1974年から2000年の間に起こった発砲事件の71%が「いじめ」に対する報復と推定している。
1985年「いじめられたことがある」と答えた中学生は日本39.1%、米国58.1%
P125:「年功型」と「能力型」の賃金:年齢別賃金の日米比較では両者の賃金カーブは「似ている」
P128:2004年の労働損失日数は9800日だが、1946年の1月(10月だけ)で241万日ある。
P131:「系列」には実体がない。企業の危機にメインバンクの融資が増えるわけではく、逆にメインバンクが交代した。
「系列企業が株式持合いを軸に結束している」も絵空事
P144:1965年「住友金属事件」:政府の生産調整要請を拒否
1953年「都市銀行と信託銀行の分離」政策を大和銀行拒否
P150:「エピソードの説得力」ー「女性の5%が乳がんにかかる」より「大統領夫人乳がん切除」:全体を正確に反映する統計的な数字より、生々しい一つのエピソードのほうが人間の判断に大きく影響する。
P152:シューメーカー・レビー第9彗星の木星衝突を最初に予測したのはアマチュアの中野主一:日本のアマチュア天文家発見の小惑星は1221個(1998年)、パロマ天文台の1203個を凌駕している。
P157:「集団の和」を破って内部告発を辞さない(日本の)組織人
P158:NHK「プロジェクトX」によれば、「VHSビデオ、自動焦点カメラ、日本語ワープロ、プラズマ・テレビ、青色発光ダイオード」は「闇研=会社の中止命令に従わず社員が密に続けた研究」から生まれた。
北城恪太郎によれば、米では特許権利を企業に無償で譲渡することを合意した上で入社することが多い。
P165:「学校紛擾」
P172:「人は城、人は石垣、人は堀」ー「和の社会」が現実なら、このスローガンを掲げる必要はない。
P174:大村益次郎は村医者出身の学者だが、西洋の軍事書をもとに長州を勝利に導く。乗馬経験がなく、官軍が京都から江戸に進軍したとき東海道を「歩いた」稀な軍司令官。
浜口梧陵
「主君押込め」
「遺題継承」
P197:911事件後に4ヶ月の間に10人のイスラム教徒が殺され、284人が襲撃され、311人に脅迫状が届いた。
P204:WW2の間、統制経済違反は毎月4万人から5万人が取り調べに遭い、1万人ほどが送検されていたという。軍事工場に徴発された労働者の多くが病気と偽り賃金の高し職場を転々とし、工場の出勤率は平均して「90%」低いところは「65%」
P205:『特高月報』”天皇なんか殺せ”
P210:状況の制約が明々白々な場合でも、人間は、行動に対する内部特性を推測してしまう。それほどまでに、対応バイアスは強力なバイアスで、普遍性が高い(人種を問わない)。
P214:「可用性バイアス」、「符号化特定性原理」:3番目の文字がKの英単語は、Kで始まる単語の倍もある。
P221:”重要な科学的革新というものは、反対者を徐々に味方にしたり転向させたりすることによって前進することはまれである。・・・現実に起こるのは、反対者が徐々に死んでいくこと、初めからその考え方に親しんだ世代が増えることである。”
「外集団等質性効果」
P231:<対応バイアス>→<確証バイアス>が作用してこの説に合った証拠ばかりに目が向く→この説が正しいのか考えようとすると<符号化特定性原理>に従って、記憶からはこの説と一致する事例ばかりが思い出され、→<可用性バイアス>の作用でそうした記憶に頼って「通説は正しい」と判断を下す。また、通説を信じている人は<錯誤相関>を認識するようになる。もし、<信念の持続>が起きるとすれば、根拠の事実が間違いだと判っても「直感」だけは残ることになる。
パーシヴァル・ローウェル『極東の魂』:『菊と刀』と同じく一度も訪日することなく、日本語を習得せずに書かれた。
P259:ミルグラム実験で「300ボルト」まで上げた被験者75%、「450ボルト」は63%
P263:「一貫性論争」ー1968年、ウォルター・ミッシェル『パーソナリティの理論』
P269:情緒障害児は行動の一貫性が高いが、状況の変化に上手く対応できないから、一貫性が高くなってしまう。
P282:デイヴィド・マツモト:「重要な決定をするとき、あなたは友人のアドバイスに従いますか?」ー統計的検定にかけると、日米差は「0.01%水準で有為だった」(偶然は万に一つ)、「0.1%水準で有為」は「明確な分化差が見出された」と結論するのが普通。
P287:図16、回答に対する影響力の大きさー「文化:個人=1:9」、「個人:状況=2:8」→「文化:状況=1:36」
P291:日米ともに平均が25%前後であった同調率の実験ではあるが、アッシュが米で行った実験で、24%の被験者は1度も同調しなかったが、5%の被験者は常に同調した。(著者らが)日本で行った実験でも、35%の被験者は1度も同調しなかったが、8%の被験者は常に同調した。「斉一性」は錯覚に過ぎない。
P295:ニーアル・ファーガソン『憎悪の世紀』
P314:”人事の進歩して真理に達するの路は、ただ異説争論の際にまぎるの一法あるのみ。而してその説論の生ずる源は、疑の一点に在り手存するものなり。疑の世界に真理多しとは、蓋しこれの謂なり。”『学問のすゝめ』
P336:ジェン・ダワー『人種偏見』