チョコレートを滅ぼしたカビ・キノコの話 植物病理学入門

チョコレートを滅ぼしたカビ・キノコの話 植物病理学入門

チョコレートを滅ぼしたカビキノコの話 植物病理学入門
P9:樹皮に含まれるタンニンでコラーゲンの繊維を変化させると皮がしなやかに・・・
クリ胴枯病菌、W・アルフォンソ・マレル
P16:水は上、糖類は下へという通常の動きも、春になって新芽が出るときには、冬の間根系に蓄えられていた糖類を使って木が生長し始めるので、一時的に動く方向が逆になる。−クリもサトウカエデと同じことをしている。
マルチェロマルピー
P25:1880年、ロバート・コッホの論理:
P36:クリ胴枯病菌に殺されたアメリカグリの大半は若木で、生物学的ホロコーストの跡に再生した二次林の構成樹種だったらしい。
古代からの天然林ほど病気に強くなかった。
P42:ヨハンナ・ウェステルジーク、マリー・シュワルツ、クリスティン・ビスマン
P61:「柳行李」、WW1でイギリスは中国人労働者10万人を送って塹壕を堀らせた。
アイルランドの泥炭層の花粉解析では、紀元前3100年にニレの花粉が激減している。同時期の欧州北西でも同様に減少している。
ニレ花粉は、紀元前3100年後暫くするとまた現れるが、紀元前2400年に再び消える。
P67:西暦50年、ルキウス・ユニウス・モデラトゥス・コルメラはブドウの支柱にするニレを育てる圃場を作る方法を述べている。この木はイタリア在来のニレの変種で、全てのオウシュウニレはこの変種の単一クローンと考えられる。
P71:アフリカでは大昔から、動物の脂肪とコーヒー豆の粉を練り合わせて、旅行時のおやつしていた。
ウィリアム・ナイトン
マイケルズ・J・バークレイ
P79:ルワク=パームシベットがコーヒーの実を食べて麝香付の種を排泄する高価なコーヒー豆は「ガセ」かもしれない?。
ハリー・マーシャル・ウォード
ヤコブエリクソンマイコプラズマ説」←ト
トーマス・リプトンの両親はアイルランドのジャガイモ飢饉でグラスゴーに移り食料品店を営む。
P91:19世紀末の葉さび病菌がセイロンのコーヒーを全滅させ、セイロンを茶の国にしたのは確かだが、イギリス人の嗜好を珈琲から紅茶に変えたはイギリスに輸出された珈琲の「品質」によるところが大きく、18世紀には既に紅茶に代わっていた。
「被陰栽培」
P105:80%フォラステロ、10〜15%トリニタリオ、残りがクリオロ、品質はクリオロが最上
アグロフォレストリー
クリニペリス・ペルニシオーサ:カカオノキは栽培されると感染しやすくなる。
P113:過敏感反応:植物は過酸化水素を出して侵入した菌糸の周りの細胞を閉ざす。
P116:バイーア州は国内生産の85%を占める。クリニペリスの胞子は150キロ飛ぶのがやっとで、飛散したその夜に感染できないと乾燥してしまう。
エージェント・オレンジ=2・4−D
P121:アメリカ人は低賃金で働く自国の移民労働者のことは口をぬぐうが、アフリカの児童労働には敏感である。
モート・ローゼンブラム『チョコレート、陰と光のある苦くて甘い物語』
ジョン・ヘッジャー「天狗巣病の標本を西アフリカやマレーシアに持ち込む馬鹿がいれば、必ず蔓延する」
『ふしぎな生きものカビ・キノコー菌学入門』
「遊走子」
「メタラクシル」
「トリコデルマ・ストロマティクム」
クリニペリス・ロレリ
ヘンリー・アレクサンダー・ウィッカム
P140:マナウスの「ゴム長者」はエクアドルの「カカオ長者」と同様に洗濯物を欧州に送っていた。
ミクロシクルス・ウレイ
P146:「菌は単一栽培された作物に引き寄せられやすい」、「自然分布域の外で栽培されると、作物はよく育つ」
P149:人造ゴム製造の動機は1940年代初めに世界総生産97%を占める東南アジアが日本の占領下に入ったことによる。
P157:ローマの下水道「クロアカ・マクシマ」の女神「クロアキーナ」、作物を疾病から守る「ロビグス」
マシュー・ティレ:コムギ網なまぐさ黒穂病から「か穀類」を守る方法を最初に提案した。
P160:(1733,Letters on England)ヴォルテール「フランス科学協会は貴族と聖職者たちの偉大さを誇示する長ったらしい演説を印刷する以外何もしない、尊大で無能な組織である」
ベネディクト・プレヴォー:なまぐさ黒穂病菌の胞子が発芽しない「石灰と羊の尿を入れたパッド」の組み合わせから、消毒に役立っているのは石灰ではなく「解けた銅」であることに気づき、野外実験で希釈した「硫酸銅溶液」の殺菌力を実証した。それ以前は「砒素や水銀」が散布されていた。
P166:J・S・T・フレンツェル:1804年、菌類の「流星」発生説
ルイ・ルネ・テュラン&シャルル・テュラン
P168:粉塵爆発:収穫機が病気に罹った小麦畑を引っ掻き回すと、穀粒から散ったなまぐさ黒穂病菌の冬胞子が大きな誇りの雲となり、決って爆発した。(悪臭のもとの)トリメチルアミンが可燃性で引火しやすかったのである。
硫酸銅溶液の散布>炭酸銅を種子に塗す>水銀を含む殺菌剤の散布
P170:栽培トウモロコシ品種の約半数は、殺虫毒素を出す遺伝子の組み入れ、または増幅させたもので、さらに殆どの品種に除草剤耐性遺伝子の組み込みだが、黒穂病菌「ウスチラゴ・メイディス」に感染すると、実は胞子の詰まった癌か、腫瘍のようになる。
生活様式の二形性=ダイモルフィズム
P171:トウモロコシの黒穂病料理:アステカ文明について書かれた16世紀文献には黒穂病菌「ウスチラゴ・メイディス」に感染して膨らんだ(と思われる)トウモロコシの絵がある。今日、この膨れた代物は「ウィットラコチェ」というメキシコ料理の珍味。
P172:アメリカのコーンフレークはコムギよりも、トウモロコシ(メイズ)から作られている。米国以外でコーンと言う用語は他のイネ科穀類にも使われる。イギリスではコーンはトウモロコシよりもむしろコムギを指す。
ジョバンニ・タルジオーニ=トゼッティ
ハインリッヒ・アントン・ド・バリー
P179:「ツベルクニナ・ペルシニカ」
P182:有性生殖による遺伝子組み換えがないと、コムギ黒さび病菌は植物側の防御反応についてゆけない。
冬に寒くなるノースダコタでさえコムギ黒さび病菌の夏胞子は越冬する。春蒔きコムギに感染するまで、ヘビノボラズの上に留まっている必要がない。温暖化すると深刻な問題になるだろう。
マイルズ・バークレイ
「ボトリティス・インフェスタンス」→「フィトフトラ・インフェスタンス」
水生菌の菌糸が菌類と極めて似ている行動は「収斂進化
P195:バークレイ以降、植物の病気研究で「物わかりの悪いばか者」が付け入る隙がなくなった。ーマイルズ・バークレイ「全知全能の神は、人の目から見れば、言い逃れに過ぎない卑劣なことなのだがご自身の目的が達成されることをお喜びになっているらしい」
P198:硫酸銅と石灰の混合液が、なまぐさ黒穂病に効くのにプレヴォーが気づいたのは、ピエール・マリー・アレクシス・ミラルデがメドックのぶどう園で”泥棒除け”に撒かれていた緑青と石灰の混合物を見た80年前である。
「マンコゼブ、メタラクシル」
P205:ハワード・ジュデルソン「ジャガイモの病害対策コストは、殺菌剤10億ドルを含め、全世界で年間50億ドルを越える。これは1日の消費量を2200キロカロリーとして、アメリカのジャガイモ価格を基準にすると、全世界の人口を2.7日分養えるカロリー源を買える金額になる」
P207:ジャガイモ病原菌の卵胞子は南米から北米・欧州に輸出された「グアノ=燐酸肥料」と共に1840年に渡った。
P210:水生菌のツボカビが藻類に感染している状態が、4億年前デボン紀の化石に残っている。
P217:キッタリーポイントの戦い、ロナルド・サックスター
P219:野生種の様に宿主の遺伝的変異の幅が広いと、病原菌との間に共進化が起こり、双方が消滅を免れる。しかし、病原菌が単一栽培種と出会うと共倒れになる危険が高いのが一般的。進化の過程で自然に単一品種になってしまったクリやニレは栽培種の様に抵抗力が殆どなくなる。
「オーク突然死病」
「ジャラの枝枯れ」
亜燐酸
P239:アメリカが朝鮮半島や東南アジア諸国に介入するにつれてイネいもち病に対する興味は高まり、WW2で日本が使用した風船爆弾を真似て、風船を利用した生物兵器「羽爆弾」の実験をしていた。コムギ黒さび病菌胞子は30トン以上生産されたが、これは地球上のコムギを全滅する量。
P243:ニュージーランドのK−T境界層の直前にできたとされる石炭層には、80種以上の植物の花粉や胞子が含まれており、その直ぐ上に、菌の胞子と菌糸の断片が詰まった沈殿物の薄い層があって、そこには植物の花粉が全く見られない。この菌の層は厚さ4ミリで、数年以上続いたが、その後の層にはシダ植物の胞子が大量に含まれているので、絶滅後に緑は回復した。
P244:菌類の中でわずかな種だけが、動物組織の中で成長できる。動物の温度調整機能によって保たれる少し高い温度に合わせて成長しなければならない。だから、低温適用の一般菌類は医学書の対象外となっている。微生物の感染症、特に菌類による病気から身を守る手段は、恒温もしくは温血動物の進化にとって強い刺激となったかもしれない。
アルトューロ・カサデハル「陸上植物が死滅した後に、増殖した菌類から大量の胞子が生産され、それを恐竜が吸って免疫機構を損なわせてた。」
白亜紀には球果植物やシダ種子植物が繁茂していた。K−T事件の後、球果植物が減少し、顕花植物が多様化し、シダ植物は消えた。顕花植物は、恐竜と同時代の化石にあるソテツ目などの種子植物の仲間から分かれたと考えられている。
恐竜はK−T事件の薄暗がりで勢いづいたスーパー病原菌に始末されたのかもしれない。