国民と消費者重視の農政改革 (経済政策分析シリーズ)

国民と消費者重視の農政改革 (経済政策分析シリーズ)

国民と消費者重視の農政改革
P14:1970年代後半、穀物総生産は13億1600万トンから12億7600万トンへと3%の減少だったが、ソ連の不作による買い付けで穀物価格は3〜4倍になる。
P20:1968年、ECは共通農業政策と関税同盟を結成、これは仏農業と西独工業の婚姻で、穀物価格を高い独逸の価格水準で域内を統一した。国際価格を上回ることになった過剰農産物の処理に、輸出補助金を使い、これが米国から市場を奪うことになる。70年代の国際穀物需給の逼迫も、80年代にはECの農業政策により過剰基調に転ずる。
・農産物の国際需給が逼迫し、途上国にとって食料がより必要となるときに、輸出補助金、食糧援助とも減少する。
・日本の農地改革と傾斜生産方式
・米国は生産制限をして、伯剌西爾亜爾然丁、中国等が生産拡大するのを好まない。1980年の対ソ穀物禁輸の際に、ソ連市場を失った苦い経験があるから1996年に廃止した生産制限を復活しようとはしない。
t中国の「退耕還林」政策、日本の農業用水は河川9割、溜池1割で、地下水は1%に過ぎない。
・吸水に毛管孔隙、呼吸に非毛管孔隙、土壌の団粒構造、土壌の生成速度は1センチで200から300年、30センチ表土は6000から9000年。
耕地の土壌浸食に非耕法、等高線耕作、作物残滓の放置などは有効。代わりに農薬の投下量が増える。
P36:「ヘクシャー・オリーン理論=ある国は、その国に相対的に豊富に存在する生産要素を多用して生産される(集約的に用いる)財に比較優位を持ち、そうでない財に比較劣位を持つ」
1)・・・途上国は安い労働を使い安値輸出をするという欧米の議論は、途上国では資本という生産要素が稀少で高いという事実を忘れている。労働生産性を決定する最も大きな要因は1労働当たりの資本量、労働の資本装備率である。従い、資本装備率が高く労働生産性の高い先進国の産品に途上国は競争できない。
P39:・・・資源の賦存量の観点からは、日本は相対的に資本が豊富で労働が稀少であることから、資本集約型で労働節約型の技術を採用することが重要である。
P40:1961年、農業基本法ー農業の構造改革による「規模拡大、コストダウン」、これを前提にして、需要の伸びが期待される農産物にシフトする選択的拡大、これらを「補完する安定政策」としての価格政策、農工間所得格差の是正を目的とした。・・・ところが、現実の農政は逆の方向(=高米価政策)に向けて走り出す。→「高米価政策:生産者側の米価引き上げ要求は著しく強くなり、与野党を問わず農民票をあてにする政治勢力はそれに同調した」
P44:・・・食糧需給率の低下は国内農業が消費の変化に対応できなくなった歴史を示す。・・・農業基本法は消費が拡大すると見込まれた畜産、果樹に生産シフトさせ、食生活の変化にわが国農業を対応させようとした。しかし、米消費が減少していく中で、米価が重点的に引き上げられ、米と麦など他作物の収益格差が拡大した。(選択的拡大の為には)本来なら消費の減少する米価を抑制し、消費の増加している麦の価格を引き上げるべきであったが、この逆の政策で、米が増加し麦が減少した(「麦の安楽死政策」)。さらに、兼業化、二毛作から単作に移行したことも耕地利用率を下げた。ー「農業の兼業所得が激増し、米単作が著しく強まり、土地利用型農業についての『選択的拡大』は、麦、大豆、他の作物が切り捨てられつつ、米のみが増産された」
・現在、讃岐うどんの原料小麦は豪州産ASW品種、いったん、外麦に移った需要は戻らない。
P48:高い米価が農地の賃貸借による移転を阻んだ。
P51:1995年、10a当たりの農地価格=亜米利加15,000円、仏蘭西38,000円、英吉利67,000円、独逸140,000円、日本1,690,000円
田中角栄内閣時代に農地の転用規制が大幅に緩められ、企業の大規模土地投機が発生し、農地価格が暴騰した。
P54:生産の選択的拡大を意図したのに、「輸入の選択的拡大」になってしまった。
P54:農業基本法制定時1961年の耕地面積609万haは2002年には476haになる。この中、100万haは公共事業で造成されているので、230万haの農地が減少した。この農地転用の半分は宅地や工業用地など都市的用途への転用。農地の土地転用によるキャピタル・ゲインは農業所得の2倍に相当する。
P56:戦後の252万戸の地主から全農地の35%、小作地の75%に相当する177万haを買収、財産税物納農地と合わせて194万haを420万戸の農家に売却した。GHQは農地買収には正当な価格で十分な補償を主張し、インフレによる物価スライド条項の導入に拘ったが、和田博雄農相は徹夜の交渉でこれを撤回させた。インフレで貨幣価値が著しく減価しても、農地改革が終了する1950年まで、買取価格は据え置かれた。買取価格(水田760円、畑450円)はゴム長靴1足(842円)にも満たないので、事実上は無償買収。
P60:湾岸諸国や豪州で、工業が十分発展しないのは「水」が無いからである。水は工業生産によって生じた「廃物、廃熱を拭き取る」役割があり、水なくして工業は成立しない。
沖積平野:排水不良を嫌う畑作の不適地は、稲作には好適である。
P64:農業は保護すればするほどに環境負荷がかかるので、保護は削減・廃止すべきである。
水田は窒素肥料中のアンモニアを分解して窒素ガスとして大気中に放出するので、地下水中の硝酸態窒素の濃度上昇は小さい。
P66:『要素価格均等化定理』の誤った応用:日米間の米価格に10倍の開きがあったとしても、113倍もの農地価格の格差がミルトン・フリードマンの主張する「要素価格均等化定理」で説明できるものではない。
P71:公害に対する規制の緩い国と厳しい国の間での(生産過程で公害を引き起こしやすい)商品の貿易では、他の条件が一定であれば、規制の緩い国の方が、この商品の生産に国際競争力を持つ。この商品が規制の緩い国から厳しい国へと輸出されると、その背後で、「公害は厳しい国から緩い国に輸出」される。
欧米の農業は地下水枯渇、表土流亡、塩類集積、地下水汚染など環境負荷のかかる農業で、亜米利加、濠太剌利、ECは日本へ農産物を輸出することにより、地球環境を悪化させている。日本はまた食糧・農産物の輸入を通じ輸出国の水(仮想水)を消費している。
P73:農業生産活動が外部不経済効果を有しているのであれば貿易自由化は輸入国から輸出国へ外部不経済効果を移転することになる。さらに、輸入国では外部経済効果があり、輸出国で外部不経済効果がある場合は、貿易自由化は地球規模で環境負荷を増大させてしまう。わが国が米、麦の輸入を増加すれば、亜米利加や濠太剌利の農業生産を拡大させ、これらの国の環境負荷を拡大させるのみならず、日本の水田・畑作農業の環境便宜を減少させる。
P77:(米国穀物は)目標価格と市場価格との差が生産者に「不足払い」される。市場価格が「融資価格=ローンレート」を下回る場合、農家は質流れにより、ローンレート相当の手取りを得るので、不足払いは目標価格とローンレートの差となる。米国農政は不足払いにより農家所得を維持しながら市場価格を低く設定することによって消費者への安価な供給と国際競争力の確保を実現している。
P80:ECでの豚肉の輸入課徴金や輸出補助金は豚肉を作る飼料穀物量により計算される。豚肉は飼料穀物の「加工品」扱いなのである。
・・・1968年からのEC共通農業政策(CAP)は「自傷行為」である。EC市民の税負担により、輸入国の消費者に安い価格で農産物を提供し、ECから輸入国への所得移転を行っているのと同じ。
P84:債権国の亜米利加が輸入を抑制したために、債務国が(債務返済の為)自国通貨を引き下げて輸出増と輸入減の「近隣窮乏化政策」を採り、失業の輸出に努めた。これは厳しい通商戦争を招き、WW2が起こる。
ガットの基本原則:最恵国待遇(1条)、内外無差別(3条)、関税主義、数量制限の禁止(11条)、補助金に対する規律、特に輸出補助金の禁止(16条)、
P87:・・・後年、亜米利加はECの輸出補助金を敵視するが、その種は自らが撒いた。16条を作ったとき亜米利加の農業者が強すぎ、止めようとしたときにはECの農業者が強くなりすぎていた。
関税相当量(TE)、関税割当(TQ)、農業保護相当額(AMS)、生産者支持推定量(PSE)、デミニマス、SPS協定
P102:(補助金協定と農業協定の違い)
緑の政策(農業協定付属書?):消費者負担ではなく納税者負担による公的資金で施行される。
青の政策(農業協定第6条第5項)
P115:1996年農業法:生産制限計画および不足払い制度を廃止し、7年間を限度とした「緑」の政策である直接固定払いを導入した。
P117:2002年農業法:CCP(価格変動払い)の導入。CCPは1996年農業法で廃止された不足払いの事実上の復活えあるが、より悪いのは生産制限を伴わない不足払いとなった。
P118:亜米利加の環境保全対策:EUが1985年以降行っている環境直接支払い導入したことは、亜米利加・EUの政策が接近してきたことを示す。
P119:1992年マクシャーリーの共通農業政策の改革:消費者負担型から納税者負担型に転換、域内農産物の価格低下で、輸入飼料穀物を域内農産物で代替でき、穀物の過剰在庫は削減、内外価格差縮小で輸出補助金も減少。
EUでは20%の大規模農家が補助金総額の80%を得る。
P123:1999年新基本法食料・農業・農村基本法
集落営農、旧農業基本法の「自立経営の育成」、「協業の助長」
(中国では)都市戸籍は医療、失業保険、年金等の社会保障が受けられるが、農村戸籍にはその権利は無い。
中国の人口一人当たり耕地面積は世界平均の40%、表層水25%、穀物など土地利用型作物についての比較優位はなく、将来輸入国に転じる。このため、野菜、果物、花などWTOの制約が少なく、国内需要拡大が見込まれ、土地よりも労働集約型であるため比較優位があり輸出も促進できる作物へ生産シフトさせてゆく道を採らざるを得ない。
P146:輸出信用、食糧援助(隠れた輸出補助金):亜米利加の輸出信用のほとんどは、途上国でも墨西哥、韓国、イラク旧ソ連邦など中進国向けで、貧しい途上国が相手ではない。
P150:途上国の定義:ガット・WTOでは、「自ら」途上国といってしまえば途上国になる。韓国、墨西哥、マレーシア、シンガポールも途上国である。途上国ではない国の方が、一人当たりGDPが低いこともある。
P157:蒟蒻990%、落花生500%、米490%、雑豆460%、バター330%、でん粉290%、小麦210%、脱脂粉乳200%、大麦190%、生糸190%
P167:「関税は輸送コストの増大」、報復関税に限らないが、社会的弱者を救おうとした借地・借家法が、住宅供給を妨げ、借家人を苦しめている。
P168:交易条件:たくさん輸入できることは良いことである。輸出できることは輸出業には良いことだが、国全体としては良いことではない。・・・貿易赤字を恒常的に続けられれば、これに優るものはない。・・・輸出ではなく、輸入が貿易の目的である。・・・国が貿易によって得るのは、求めるものを輸入する能力である。・・・すなわち貿易の利益は輸入・消費の利益であって、輸出・生産の利益ではない。
P181:国内政策、アクセス水準の低さ、砂糖、乳製品の競争力の低さについて亜米利加とEUの利害は一致している。
P184:・・・大きな内外価格差を残した中で関税割当(アクセス)が拡大されれば国内生産縮小という対応しかない。食料安全保障、消費者利益を考えるのであれば、交渉において関税引下げ、アクセス拡大のいずれか求められる場合は迷わず関税引下げを選ぶべきである。・・・ハービンソン議長案の亜米利加・EUのアクセス水準を拡大する提案は、ブラジル、ケアンズ諸国に訴える力を持ち、グローバルに通じる主張である。
P185:2001年亜米利加の「米」生産者価格がトン当たり93ドルとタイの124ドルを下回ったのは、生産性の向上ではなく、補助金増加による。
P186:自由貿易協定締結の是非は貿易創出効果と貿易転換効果の大きさによる。
貿易創出効果:その国の生産が輸入に代替される(消費者は安い輸入品を購入できる)
貿易転換効果:その国へ一番安く輸入していた輸出国から協定輸出国からの輸出に転換される(関税収入が減少する)
P190:スパゲッティ・ボール現象
P195:わが国の採ってきた多国間貿易主義は間違っていない。日本としては農政改革を進めWTO交渉による関税引下げに対応することを基本とし、自由貿易協定については貿易転換効果のある一部の高関税品目は対象に外しながら、それ以外の品目は相手国の要求に応じて出来るところから対応していくべきと考える。日本の平均関税率はかなり低く、このような方法でもかなりの品目が自由貿易協定の対象となる筈。
P197:英吉利は世界にライバルが居なくなったときに自由貿易を採用し、これから転落すると再び保護主義に転じた。
南北戦争は、北部の工業を保護する高関税主義に対し、綿花を輸出し自由貿易を推進する南部の農業者が反対したのが原因。
亜米利加憲法は通商権限を行政府ではなく議会に与えた。→ファスト・トラック
P201:1955年、日本が「ガット35条」の対日適用を容認した時、亜米利加は日本のガット加盟の為に関税引下げを肩代わりしてくれたのである。
P203:弁護士出身の多い連邦議会議員は、亜米利加の貿易赤字は日本の不公正貿易によるものだと信じている。彼らに生産よりも多く消費していることに原因があるとマクロ経済学上の事実を説明しても理解されない。
亜米利加・EUの「バナナ紛争」
P208:・・・貿易自由化で、輸入財の価格が低下しても、その価格水準でなお競争できる企業・農家は存在しえる。ヘクシャー=オリーン・モデルでも輸出財に完全特化するのではなく、生産量は減少するが輸入財も国内生産する不完全特化を想定している。・・・比較優位論の主張は自由貿易は他よりも消費の効用水準を最大にする。すなわち、自由貿易は望ましいである。・・・比較優位論を’〜すべし’という意味で主張できるのは、自由貿易保護貿易よりも良いという限りにおいてで、財の算出水準がかくあるべきだと主張するのは見当違いである。
先進諸国は育成すべき産業について保護貿易政策を採りながら発展した。この逆を辿ったのが、農産物輸出に特化した途上国経済で、比較優位論が誤用された。→モノカルチャー経済、「窮乏化成長論」→将来、日本の工業品優位、農産物劣位が逆転しないとは誰もいえない。
P216:ガット21条:・・・ガットは輸入国が輸入を規制することは認めないが、輸出国が輸出を停止することは認める。
「エビ・カメ事件」
P220:関係国がWTO紛争処理に訴え得るのは、貿易利益が損なわれた場合だけで、輸入食品により国民の健康が損なわれたり、病害虫侵入による動植物被害は対象にならない。
P227:多面的機能:・・・外部経済により市場の失敗が存在し、社会的費用と私的費用が乖離している場合に政府の介入が必要とされるものである限り、その政府の介入は生産に影響を与えるものでなければならない。・・・これまでの緑の政策には外部経済や多面的機能の観点は完全に欠落していた。
P238:消費者・納税者負担による農業保護費用は2003年で5兆円、これは消費税2%に相当。
P266:農政予算2.4兆中、1兆円を占める公共事業の大半は「土地改良事業
P267:「農家」と呼ばれる家計の多くは、『農地』と称する土地を保有するサラリーマンにすぎない。日本の農業を保護することと、現存する『農家』を保護することは同値ではない。『農家』を一律に保護することが、日本の農業を破壊することにつながりかねないのが問題の本質。
”医療は大切だから医師の師弟については大学の医学部への入試を免除する。しかも入学した後に医者になる気をなくしたらその権利を高い価格で国に買ってもらう。こんな制度があったら誰も納得しないだろう。ところが農業については『農業』を保護するという名目の下に、これと似通ったことが長く行われてきたのである”
P269:「法学的教養を身につけた官僚の陥り易い過誤は、経済や社会に生ずる矛盾や社会悪を制度的な側面、特に法制上の問題から考察し、理解する傾向があることからくるものが多く、より根本的な経済的な諸関係およびその変化を分析し、推論する努力が不足している」
P270:4)自作農主義は「目的ではなく手段である」筈が、自作農主義と称されたとたん、自作農なるものが農民の理想像であり、自作農たることが政策の最終目標であるような錯覚が生まれてくる。
P274:農地法は農地改革が当然の前提とした農地の所有者、耕作者の(社会的な)義務を規定しなかった。
P275:憲法草案第28条は「土地および一切の天然資源の究極的な所有権は人民の集団的代表者としての国家に属す。国家またはその他の天然資源をその保存、開発、利用または管理を確保または改善するために公正なる補償を払いて収容することを得」としていた。これを見た松本国務大臣は不動産の国有化であると考え、正面から議論するとGHQに勝てないので、GHQに気づかれないことを願いつつ、誰にも相談せずに削ってしまったという?(中村広次「2002」『検証・戦後日本の農地政策』45頁) 
P279:中山間では耕作放棄、平では他用途への転用。
P283:技術を持たない農家は、転作奨励金を得るために作付けだけを行い収穫はしないという「捨て作り」を行ったが、皮肉にも農地の維持管理としては機能した。
P286:1)零細農家とは農業規模が零細であるというだけで、農家所得が低い訳ではない。農外収入により零細兼業農家の所得は大規模主業農家を大きく上回るのが現状。
P291:生産物の価格低下で借り手の支払可能地代、地代負担力が低下する場合の農地を大規模層へ流動化させコスト・ダウンを図る方法:・・・大規模層である主業農家の支払可能地代を増加させる。・・・大規模層にのみ面積当たりの直接支払いを行う。・・・零細農家は自ら耕作すれば直接支払いは受けられないが、これを主業農家が借り入れれば、主業農家から零細農家は地代として直接支払いの一部を得ることが出来る。
P294:(ウ)農地を貸すときは(返してもらえないのを恐れて)経済的に行動しないが、転用機会が生じて農地を売るときは経済的行動をする。
農地の流動化による担い手の規模拡大は「零細分散錯圃」を解決する。
P310:主業農家の割合は2002年で酪農90%、施設野菜72%、花・花木59%、稲作7%
P313:同じ耕作面積で公務員兼業と専業とで同じ生産調整面積、同じ売渡価格では、コメ価格が下がって離農するのは「専業農家」である。
P317:消費者負担を含む国民経済全体の負担はPSEが示す5.5兆円のうち90%の5兆円が関税による価格支持、消費者負担の部分。
P320:生産調整を止めて米の価格が下がれば、収益格差解消により転作奨励金が無くとも他作物にシフトする。
「れんげ不耕起農法」
P328:・・・米需要が高まり、1900年頃には米は輸出作物でなくなり、不作の年には米を輸入するようになった。国産米の供給不足により、米市場は売り手市場となった。その売り手は金納小作料ではなく物納小作料によって米を小作人から譲渡される地主であった。寄生地主となっていた地主階級は農業に投資して生産性を向上させて利益を増加させることよりも、米供給を常に不足がちに保って高米価により利潤を得ようとした。彼らは国防に名を借りた食糧自給を主張することにより、外米の輸入を阻止する政策を主張したのである。−東畑精一[1973]−「柳田國男の農政論の中心は『誰が真実の生産性を担っているか』で、この者こそ真に擁護されるべきということにある。それが寄生的地主階級でなかったのは明らか」
柳田國男『時代ト農政』、『中農養成策』:柳田は産業組合や耕地整理組合に地主から農地を買わせ、耕作者に売り渡し経営規模拡大を図る提案をしている。
企画院事件
石黒忠篤、和田博雄、小倉武一
「郷土会」