フードセキュリティ―コメづくりが日本を救う!

フードセキュリティ―コメづくりが日本を救う!

フードセキュリティ
P6:購入後においても特徴を把握することが困難な「信用財」
P7:DNAは豆腐なら解るが、醤油では解らないので、醤油に対して遺伝子組み換えの表示要求は無い。
P15:1865年「交雑育種法」、1930年代「突然変異育種法」、1960年代「組織培養技術」
P24:ミートホープ事件で内部告発者の調査要請を拒否した農水省出先機関がある。
P28:セレンやビタミンB6等、摂取が必要とされる最大値と毒性を示す最小値の差が小さい必須栄養素の摂取には要注意。
P33:ペルー政府は発ガンリスクのゼロを目指して水道水の塩素処理を中止し、80万人がコレラに罹患、七千人が死亡。
P36:HACCPを雪印乳業は採用していたが、食中毒事件を起こす。
P45:「管理されたリスク国=亜米利加」BSE感染牛に対する(生後20月齢以下に限る輸入)日本のSPS措置はWTO・SPS協定違反の可能性がある。
P46:「デラニー条項」は1996年に廃止。
P49:国際機関で決定・採用される科学は「交渉による科学」:多くの意見は産業よりのNGOから出されている。
P52:食品中のタンパク質は窒素含有量から推計されるので、中国では乳製品に有機窒素化合物(メラミン)が添加された。
P65:1973年の大豆禁輸の期間は2ヶ月
P69:緑の革命では「特殊な米」で灌漑が効果をあげたが、一般的に灌漑が効果的だと主張するのは誤り。
P74;2007年「エネルギー自立・安全保障法」、「再生可能燃料基準」ー2022年までにとうもろこし由来のエタノール150億ガロン、他セルロース由来210億ガロンまで拡大する。
P76:オバマ政府が導入予定の「排出権の配分」はオークション、入札方式。
P77:生産要素の中、除草剤や農業機械は「労働」で、化学肥料は堆肥で「代替」できる。燃料は労働で代替可能であるが、太陽光、水、土は代替不能な生産要素。日本の石油類消費の内、農林水産・食品製造業が占める割合は6%に過ぎず、輸入が止まっても石油備蓄(全消費の170日分)を食糧生産に優先的に割り当てれば相当期間食料生産は維持できる。石油が無ければ農業生産が行われなくなるという主張は正論にあらず。
P82:水田では、窒素肥料中のアンモニアを分解して窒素ガスとして大気に放出するので、地下水中の硝酸態窒素の濃度上昇は水田では小さい。
P83:日本では小麦一粒で45倍、米一粒は125倍に稔る。
P84:千葉市川市は水田維持に補助金を交付している。
P86:日本の明治期には数千種の米が作付けされたが、現在は10品種で70%の米生産。
P91:亜米利加にとっては、農産物の需要先が確保されさえすればよい。輸出→バイオエタノールの生産振興へ
P92:戦後食糧難時代に、生産県の知事たちは(東京など)消費地への米供出に抵抗した。
P96:農業就業人口 < 農家戸数:兼業農家と農産物を販売しない「自給的農家」が増加している。
P98:OECDが計測した2002年の日本の農業保護額(PSE)は5.3兆円で、農業のGDP(農業生産額9.9兆円から農業中間投入額4.7兆円を差し引いた5.2兆円)を上回る。つまり、保護がなければ日本農業GDPはマイナス。
P101:・・初期の地主制においては、先進的な農業技術の取得者であった地主たちは、品種改良、施肥改善、土地改良により、農業生産力を向上させ、小作人の保護を行う。肥料を購入する資力の無い小作農に対し、地主資金と小作人の少額貯金を原資として、肥料の共同購入を行わせ、収穫量の増加を実現させたりもした。小作人の農業経営を安定・向上させることが、小作料の増加や地価の上昇につながると考えたからだ。
WW1後の工業の発展と農業の停滞により地主は農業生産から離れる。農地が売却され、農村に不在の商人・金融業者などが地主となるなど地主勢力は寄生化する。地主は、農業の生産性向上にではなく、小作料として米の販売に関心を持つようになる。今日の生産調整(減反)と同様に、市場への供給を制限することにより、米価の上昇を目論んで輸入の制限を図る。
地主らは帝國農会を組織して、政府に対し、国防強化を口実に「食糧自給、米の高関税」が必須と主張、1905年、日露戦争の戦費調達名目で米の関税が導入され戦後も維持される。また、1921年には米穀法により政府は輸出入を制限できるようになり、さらに、1931年からは輸出入は許可制となる。・・・
P104:1930年代米価暴落のなかで、小作料を滞納する小作人に対して「在村小地主」が自作化のため、小作地の引き上げを要求するようになる。小作人と地主は激しく対立し、この小作争議は1920年の408件から1935年には6824件に増加する。
P105:1931年産米、石(150キロ)当り地主米価45円、奨励金5円であったが、1935年産米では地主米価55円、奨励金37.5円と小作料は大幅に引き上げられた。この奨励金は今日の「直接支払い」のようなもの。
P111:農地改革は252万戸の地主から全農地の35%、小作地の75%に相当する177万ヘクタールを強制的に買収し、財産税物納農地と合わせて194万ヘクタールの農地を420万戸の農家に売却した。これで小作地のシェアは46%から13%に低下した。
P112:GHQの農地改革担当ラデジンスキーは共産主義に対抗するために農地改革を行い日本の農村を保守勢力の金城湯池にすると考えていた。
P113:80年代、対米貿易黒字により日米経済摩擦が激化し、農産物の自由化が要求されるたびに、農林水産省は自由化すると自民党が潰れ社会党政権ができると亜米利加に抗弁した。
P120:(戦前)産業組合と農会、(戦中)農業会、(戦後)農協:農会は地主階級の利益を代弁、小作の主張は政治には反映されない。戦前の農業・農村の声とは「地主」の声だった。
P121:産業組合の農業倉庫は地主が小作人から小作料物納制により徴収したコメの貯蔵庫として、出来秋に搬入されるコメを端境期に有利に販売する役割を果たしていた。
P123:農協は政府からコメの代金を代理受領して、一時「コール市場」で運用した後、組合員の農協口座に振り込み、そこから肥料・農薬代金を差し引き、残る剰余も可能な限り農協貯金として活用した。
P126:「零細分散錯圃」:農地売却の際に地片を纏めれば農業経営も効率的になった筈だが、GHQに実施期間を2年間と指示されたため、小作地片を耕作していた小作人にそのまま譲渡するしかなかった。
P131:1945年の国内米価は国際価格の約半分、1953年まで国際価格を下回って設定されていた。
P133:主業農家は多くの減反面積を負担させられ、稲作を拡大できないので規模の利益を発揮できない。高米価政策で零細農家が滞留したので、農地を集積できない。コストが低下しないので所得が向上しない等の不利益を受ける。
また、品種改良による単収の向上も、農協や財政当局に評判の悪い減反面積の拡大につながるので忌避された。
P135:農業基本法は構造改善を社会党から『貧農切捨て』と叫ばれ、農林省の労組も反対運動を行う。
P140:産出額に占める主業農家のシェアは畑82%、野菜82%、酪農95%、コメ38%(2005年)。単一経営農家の内訳は、コメ農家70%、野菜農家9%、畜産農家4%。しかし、農業総産出額の内訳は、コメ22%、野菜25%、畜産29%(2006年)、コメ農業は全農家の「70%で22%」の産出しか生まないのに、畜産は全農家の「4%で29%」を産出している。・・・北海道では1960年から2000年に酪農農家戸数40万戸から3万戸を切るまで減少して、生乳生産は200万トンから850万トンに増加した。零細農家の維持と農業生産の維持は同じではない。
P142:収量拡大のための品種改良は研究者間ではタブーだった。
P144:毎年一兆円規模の「農業基盤整備事業」が農家負担10%〜15%で実施されてきた。
減反独禁法違反の供給制限カルテル、この維持の補助金は各年2000億円、累計7兆円に達する。
P147:兼業により副業コメ単作農家の所得792万円、勤労者所得646万円(2002年)
P148:1969年総選挙で減反に反発した農家も補償金で面倒を見る選挙公約が乱発され、コメ減反50万トン分が農地の住宅用地転用に化けた。
P153:農家戸数300万戸で、500万組合員
P159:コメ先物市場で農家がヘッジすれば、価格安定政策は不要となるが農協は反対した。”先物価格が高いと農家は減反に協力しなくなるので反対だ”、先物を導入すると減反に協力しないと主張したと報道されている。
P162:2006年PSEは亜米利加293億ドル、EU1380億ドル、日本407億ドルと日本の農業保護水準は亜米利加と同程度、EUの3分の一。人口・経済規模を考慮してもEUと同程度だが、しかし、農業生産の規模が日本は小さいので、農家受取額に占めるPSEの比率は亜米利加15%、EU33%、日本55%と日本の農業保護が欧米よりも少ないと主張するのは誤り。
P164:・・・WTOの国内補助金削減の指標となっているAMSは亜米利加1兆6千億円、EU4兆円、日本6千億円を根拠に日本の農業保護水準は低いという主張は誤り。AMSは行政価格支持と補助金等の国内政策(関税は別途削減を行う)の削減の指標。これもPSEに似た考えに立つもので、行政価格による消費者負担(内外価格差×生産量)の部分と貿易歪曲度が高く削減対象となる補助金の財政負担の部分からなっている。1997年度のAMSは3兆1708億円。このうち、補助金等の財政負担は2029億円に過ぎず、消費者負担による内外価格差相当分は2兆9679臆円で93.6%も占めていた。品目別にいえばコメのAMS2兆3975億円のうち2兆3153億円(96.5%)がコメの市場価格支持に由来する部分で、この部分は総AMSの73%も占めていた。ところが、AMSは1998年度には7665億円に大幅に減少する。これは食糧管理法が廃止され、行政価格であるコメの政府買入価格がなくなり、AMSの7割を占めていたコメの行政価格による内外価格差相当分がAMSの算定約束上消滅したからである。日本のAMSの減少は農業の生産性向上や国民・消費者負担の減少を反映したものではなく、行政価格廃止という単なる制度改革の結果に過ぎない。・・・
P179:コメ60キロ当り2万円の関税は、国内米価1万4千円より高く、輸入米価格「0円」でも輸入されない。
P186:世界の農産物貿易が過剰から逼迫へと構造転換しているのに、消費者負担型農政から脱却できない日本政府は過剰時の低い国際価格を想定した関税による保護という対応しかできない。
P191:300万戸の農家の跡取りからしか後継者を選ばないことが農業の衰退を招いた。
P195:農業基本法第一条の目的規定の「農地はその耕作者自らが所有することを最も適当であると認めて」は農地法案の決済文書を持ちまわった際に、農林事務次官が思いつき書き入れたものだが、以降この文言が農地法の基本理念を示したものと農業関係者に受け止められる。
P199:・・・農地保有のコストを高めるため、耕作しないものに対する固定資産税の宅地並み課税を行うべき、これは土地転がしを目論んで、都市の土地を住宅等に利用せず駐車場にすること防止する「特別土地保有税」と同じ機能を果たす。
P202:2001年の参議院選での民主党の選挙公約には「直接支援・直接支払制度の導入」が盛り込まれていたが、2004年の参議院選マニフェストでは「対象者を絞る」という要素が外される。
P208:「お前たちに売るコメはないよ」:『食料安全保障のために農業を守れと言うが、いざという時に日本の農家が国民の食料を確保してくれるはずがない』
P210:・・・WTOで日本には輸出補助金が禁止されているが、減反を止めて米価水準を下げた上で輸出を行えば、仮に主業農家に直接支払いを交付したとしても、それは輸出補助金に該当しない。これは亜米利加・EUの輸出のやり方。
P214:・・・都市在住者が相続すれことで、農協預金が都市銀行に流れつつある。
P215:貯貸率は都市銀行100%、地方銀行80%、JA農協「30%」、分母の貯金残高は農業縮小の見返りの農外所得や農地転用代金で莫大になるのに、分子の貸出金残高はアパート・住宅建設資金が多少増加しても、農業縮小のために減少してしまう。この70%の一部が「住専」に流れた。