著作権法

著作権法

著作権法 中山信弘
P10:差止請求権をもった物権類似の権利
P12:書籍や絵画等は著作物を固定している媒介物であるに過ぎず、著作物そのものは当該媒介物とは異なった観念的な存在であって、情報の一種である。
P17:仮に著作権特許権と同様にアイディア(思想)まで保護すると、余りに強力になりすぎ、思想・表現の自由等の現代社会のける基本的な価値まで侵しかねない。・・・人の情的側面とは関連が薄いもの、つまり実用性が強いものほど著作権法から離れるという傾向を見て取れる。
P18:著作権と所有権との最大の差異は、取戻請求権(占有回収請求権)の有無。
P19:他人の創作物と同一であっても、自らが独自に創作したものであればその者の人格は流出しているのであり、保護されるべきである。
P20:情報の豊富化をもたらすためには、ある種の情報につき、公共財であるが故の外部不経済を内部化することが必要となり、そのための法的手法が知的財産制度である。
P53:・・・重要なのは、権利者へのインセンティヴと他の者の情報の利用の自由との調和点を探るということであり、一方に偏することは好ましくない。このような観点からも、創作性を「表現の選択の幅」と捉えることは有意義である。
P63:・・・仮に機械の設計図を著作権法で保護するならば、機械の設計思想にまで立ち入って創作性を判断するということにならざるをえないが、それでは機械の設計思想までをも著作権法で保護することになりかねないという危惧が生じる。
P128:原著作物から事実・アイディアだけを抽出して新たな著作物を作成した場合には、それは最早二次的著作物ではなく、新たな別個の著作物となる。
P134:極論すれば、実質的には著作権法で保護すべきものを表現と称し、保護すべきでないものをアイディアと称しているともいえる。
P151:サザエさんやポパイのような一話完結形式の連載漫画は、通常は逐次公表著作物ではないと解されているため、各連載毎に著作権の満了期限が異なる場合がある。
P163:著作者とは著作権著作者人格権の原始的取得者。契約で著作者を変更することはできない。
P171:・・・産業として投資を行ない、その投下資本の回収と利潤の獲得という経済目的のために、財産権と著作者人格権を一ヶ所に集中させ、流通・利用の促進を図るという必要があり、著作権の経済財化傾向を示すものとして、著作権の新しい体系を考察する際に注目すべき事象である。
職務著作
P187:コンピュータを操作した者に創作的行為がない自動翻訳や自動作曲等の著作者認定。・・・コンピュータ創作物の扱いは、従来の著作権の枠組みでは解決不可能であるという認識が必要。
P189:著作権の本質は排他権であり、その反射効として利用の独占ができ、その意味から情報財には理論上は無限の利用可能性があるといえる。・・・共有持分は、換金や損害賠償請求のときには意味がある。
P202:特許権は発明を業として実施する権利の占有で分割して譲渡することはできないが、著作権は著作物の利用形態に応じて、複製をはじめとした支分権の束として規定される。
P204:一定の利用形態を禁止しているだけ
P207:顔真卿自書建中告身帖事件の判決:所有権は物の有体的側面の使用・収益権限であり、その物を撮影したり絵を描いたりする無形的利用(情報の利用)には及ばず、著作権法は、保護期間満了後の著作物をパブリック・ドメインとして万人が利用可能な状態に置くことにより文化の発展を図っているのであり、期間満了後に所有者が所有権に基づき無形的利用を独占できない。
P214:一時的・瞬間的な蓄積は著作権上の複製と解釈すべきではない。
P220:公衆送信権・公衆伝達権
P224:応用美術の展示権
P237:貸与権の問題点
P245:現行法では、違法複製物を私的使用目的のために複製することも禁止されてはおらず、友人から借りた違法複製物から複製も侵害とはならない。
P247:技術的保護手段を回避する装置やプログラムの譲渡等は禁止されており、違反者には罰則が設けられている。しかし、技術的保護手段を回避して現実に複製をした者は不可罰であり、民事責任だけを負う。
P249:デジタル録音・録画機器と記録媒体の製造業者等には使用者からの補償金の支払い、請求、受領に対する「協力」義務がある。
P250:補償金の返還制度
P252:日本の図書館では複製物の郵送は合法だが、ファクシミリやEメールは公衆送信権に抵触すると考えられている。
P253:複製物の半分:百科事典の一項目も半分、写真や絵画も半分、俳句は8文字しか複製できない。
P262:「禁引用」、「禁転載」のような一方的表示は、契約関係にない一般の引用者に対して法的には意味が無い記載である。引用は著作権法が認めている「重要な権利の制限」であり、著作権者の一方的意思表示によりこれを禁止することはできない。
P291:放送事業者等による一時的固定(44条)
P308:フェアユース
P318:著作者人格権は取引の対象とはなりえない。権利行使をしない契約を結ぶことで、事実上ライセンス類似の効果を生ずることがありうる程度である。
P329:著作権の実体は禁止権:利用許諾の実体は、その禁止を解除すること、即ち契約相手に対して差止請求権・損害賠償請求権・不当利得返還請求権を行使しない、あるい刑事告訴しないという不作為を約束することにある。
P330:著作物の放送・有線放送の利用許諾には放送のための録音・録画の許諾は含まれない(63条4項)。
P344:過去の創作物の保護期間を延長しても、インセンティブに何ら寄与しないのであり、今後創作されるであろうものについてだけインセンティブを与えれば足りる筈である。
P344:著作物が「入超」である日本での保護期間の延長は、産業政策的観点からは国益に反する。・・・従来の議論には、著作物の経済財としての観点が弱かった。・・・著作物の大半は死後50年を経ずして経済的価値を失っており・・・
P357:戦時加算
P370:私的領域と著作者人格権:・・・自分の部屋に掛かっている《カレンダーの婦人の絵に髭》を描いても同一性保持権侵害となり、5年以下の懲役または500万円以下の罰金に処し、またはこれを併科される可能性がある(119条2項1号)・・・私的領域でなされた改変であっても、その改変物が外部に流失する可能性を実効的に防止することは困難なので、改変自体を違法としておくのが実質的な根拠と考えられる。・・・特に無形的再生については不合理が著しく、形式的には、自宅の風呂場で替え歌を歌っただけで「同一性保持権侵害」となってしまう可能性がある。
P389:職務著作の使用者:他人が創作したものを自己の名前で公表した者を保護する人格権とは何を意味しているのであろうか。
P391:和歌の本歌取り芥川龍之介は説話から、ブラームスは民謡から採譜、ユトリロのモンマルトルの絵は写真から
P397:平成13年最高裁判決(ときめきメモリアル事件):断言できないが、同一性保持権に関しては、具体的な表現から一歩進んで、ストーリーまで保護することを意味しているようにも見える。・・・これらのゲームは劇場用映画とは異なり、操作をする者がデータやパラメータを変えることにより、ストーリーの展開を変更できるという性質を有しており、これを著作者人格権侵害の問題として扱うこと自体に問題がある。・・・その上、この種の事件は、法人の著作者人格権が私的領域での改変行為によって侵害される場合が典型例であり、最高裁判決の結論には問題が多い。
P405:著作権法は著作物という無体の情報を扱っているのであり、有体物である原作品や複製物の破棄自体は同一性保持権侵害とはならない。
P414:著作者なき後の人格的利益の保護:60条の「著作者が存しなくなった」は、法人の場合には解散を意味する。・・・60条の違反は「非親告罪」、理論的には永久に刑罰を受ける可能性がある。
P422:著作隣接権保護の根拠:被伝達物が著作物であるから保護されているのではなく、情報の伝達であるから保護されていると考えるべきである。例えば野球中継放送は著作物ではないが・・・情報の伝達者の中で保護をしないと業として成立が危ういものにつき特別な権利を与え、インセンティブを与えている。
P424:他人の著作物を無断で利用して実演等がなされた場合でも著作隣接権が発生するが、それは他人の著作物を無断利用して二次的著作物を創作した場合と同じ法的関係になる。
P427:落語のラジオ、スポーツ中継は実演家の利益となった:実演家の著作隣接権制度は、今日では機械的失業対策というよりは、放送やレコードでの実演の利用により生じた利益の一部を実演家・放送業者・レコード製作者との間で分配をするというところに意味がある。
P427:《ワンチャンス主義》
P430:「録音権・録画権」−この権利は実演家の実演そのものを録音・録画する権利であるから、同じ曲であっても他の実演家の実演には及ばない。従って物真似は、作詞家・作曲家の著作権侵害になることはあっても、他の実演家の実演そのものを利用したものではないために実演家の録音・録画権侵害にはならない。(但し、物真似の態様によっては不法行為となりうるのは別論である。)
P437:商業用レコードの二次使用(95条)ー難視聴地域での有線放送による同時再送信は無償でなしうる、ネット配信は、ネット局に二次使用料の支払義務はある。
P451:実演を写真に撮る行為は実演家の録画権には抵触しないが(91条1項)、テレビ放送された実演を写真に撮れば放送事業者の複製権侵害となる(98条1項)。
P474:無過失で侵害作品を出版した者は損害賠償責任を負うことはないが、差止は受けることになる。
《カラオケ法理》
P507:頒布目的のない輸入は税関で止めることは出来ない。・・・頒布目的のない個人輸入は合法。
P511:《ワンタッチ・スルー》