日本事物誌 (1) (東洋文庫 (131))

日本事物誌 (1) (東洋文庫 (131))

日本事物誌1 チェンバレン
P3:暗算というものはこの島国に存在しない。
P4:四月に着いて、今六月とするなら、日本式には3箇月居たことになる。・・・1873年明治6年)の改暦前に、[陽暦]で一月か二月初めに誕生があった場合には、死亡時年齢が”3年”間違うことがある。
P7:日本の新政府は隠居の風習を止めさせようと努力している。
P10:師匠は最も優秀な弟子を養子にする。
P11:公卿の息子は成年に政府から扶持を貰うのが習慣であった。だから、役人が2、3歳の息子を持っているときには、約15歳(成年)の少年を養子に貰い、彼の為に土地か米の下賜を願い出る。それが手に入ると、今度は自分の息子を、養子に入れたばかりの青年の養子にする。・・・現今、商人は商店における自分の利益を譲るために、大番頭を養子にする。今度は、その番頭が旦那の息子を養子にする。・・・明治維新後しばらくの間は、徴兵を逃れるために養子縁組がしばしば行われた。一人息子は兵役免除されたからである。
P13:日本の農村経済では、四輪の大荷馬車や一輪の手押し車のことを少しも知らない。
P14:日本米は、ネバネバするところが、隣接する国々で高く評価されている。・・・農村地方では、小麦、大麦、特に黍が真の主食である。米は祝祭日、或いは病気のときに用いられる。(”あの子はお米を食べさせるほどになった”とは病人の容態悪化をほのめかす言説)・・・日本米は贅沢品としてアジア隣国に輸出され、下等米を輸入して日本の下層階級が安く買う。
P16:アイヌは世界一毛深い。女性はその上唇に口ひげの、両手に幾何学模様の入墨をする。酷く酒に溺れる。入浴の習慣は全く知られていない。・・・アイヌ語は真の人称代名詞を持つ、接頭辞をつけて、受動態をつくる。
P24:日本に青銅時代があったという証拠は、ほとんど無い。
P29:5世紀に漢字を知るようになっても、この時代の墓には少しも碑銘が発見されない。
P31:芝〔増上寺
家屋は地面の上に立っている。壁が無い、少なくとも連続的な壁は無い。
P38:建築的にいえば、日本は悪いときに欧州を発見した。
P43:平時において実際に召集されるのは7人中一人に過ぎない。
P45:最初の優れた日本人画家は巨勢金岡
P59:竹は巨大な草
P63:一月一日は国民全体の誕生日と見做す事ができよう。・・・大騒ぎをして祝うのは61回目の誕生日(還暦)のときだけである。
P75:田村直臣『日本の花嫁』・・・岡倉覚三(天心)『東洋の理想』、ヒルドレス『日本古今史』
P83:教育のある日本人に仏教について質問すれば、10人中9人が、にっこり微笑み返すだけ、そして100人中99人までが、この題目について何も知らず、自分の無知を得意がるのである。
P84:日本人は仏典を日本語に翻訳するという骨折りを少しもしなかった。
P85:1928年に10万円で建立された別府の大仏
真宗は仏教の発展というよりは、キリスト教を戯画化したものであると、人は想像するであろう。
P87:1888年明治21年)までは、あらゆる階層の人々は等しく欧州の思想を吸収するのに一意専念であったから、治める者と治められる者との間の限界が明らかでなかった。
P90:古代天皇勅語は、中国古典から抜粋した寄集めである。
P91:日本人ほど君主(天皇)を傲慢に扱った国民はおそらくいない。
P92:武士道という言葉は、1900年以前は、いかなる辞書にも出ていない。
P96:欧米人は不思議な物事に対して異常な好みを示し、自己軽視の妙味を解する。
P98:文学作品はもちろん、新聞や普通の手紙でも、自分の習った日本語で書かれているのではなく、別な方言で書かれていることに気がつく。
P102:人間は、信ずれば大いに利益になるようなことは、常に信ずることが出来るものだ。
P109:「尾の無い猫」
P112:伊勢の御守りは、神社の建物断片
P120:日本語では、語尾を切り取っても、俗悪な趣味とはならない。
P121:見下げはてた商業道徳が存在している。
P132:死亡の日付をでっちあげる。何某提督が月曜朝に死亡したのを、誰でも知っているのに、彼は火曜に多くの訪問を受け、水曜には一階級昇進し、ひょっとしたら木曜には汽車旅行、そしてついに金曜日の午後7時45分に死亡という公式の認可を受ける。
P135:鵜飼の鵜は自分たちの序列順番を良く心得ており、この権利が侵されると激しく抗議する。
P136:帝の火葬が廃止になったのは、八兵衛という魚屋の陳情による。
P137:火葬後に残る骨の内、歯は後まで取っておき、高野山に納めることが多い。
P145:狐は指の爪と肉の間から入るのが最も多い。
P146:日蓮宗の僧侶は狐を追い払うのが最も上手である。
P149:「犬神持」
P154:日本婦人の服装は400円も掛かることが多い。・・・老婦人の多くは頭を剃っている。
P166:翻訳したくても相当する語句が無い、日本の教育家は、この事情をよく知っているから、高等の学問は英語を媒介物として伝達することが過去永年にわたる習慣であった。・・・英語が単純で慣用句的であればあるほど、それだけ酷く学生は理解に苦しむ。
P167:学生のストライキなど無しに一学期が過ぎることはほとんど無かった。
P169:日本で刺繍の最高の品は男子の作品。
P193:混血児は「ユーラシアン=欧州+亜細亜」と呼ばれる。
P195:最初の城は松永久秀、それの改良型が織田信長
P202:最初の天然の扇は棕櫚の葉。
P204:1873年に兎が流行した。それ以前には居ない。・・・1874年〜5年は闘鶏が流行。
P205:相撲が卑俗な遊戯から一般的流行に昇格した。
P207:12月13日「事始」:御事汁をいただく。主人から召使に祝儀が渡されるが、お歳暮と呼ばれる。
3(?)月30日には晦日蕎麦
P209:7月13日から16日「盆」:主人は召使に謝礼[中元]を出す。13日よりも遅くてはいけない。
P210:10月20日「恵比寿講」
「二十四孝」
P216:回向院:犠牲者の多くが家族もろとも死んだ明暦の大火では、死者の親戚から布施を集められない。それで、地方から幾つかの仏像を持ってきて、しばらくの間、江戸の市民に参詣させ、その賽銭で財政をまかなう。(両国ではアトラクション=相撲などの催しがかけられた)
P218:「背中に小さい子供を背負った汚い子供たち」
P228:1890年東京の小さな食堂では、どこでも、パンを山のように積んであって、人力車夫や他の人夫たちが喜んで食べるために出してあったが、まもなく消えて、昔ながらの食物に戻った。”肉を汚らしく料理する”ことが、昔の食事法に帰ったことと大いに関係があった様である。
P229:最後の一杯のご飯にはお茶を少しかけて食べるのが、普通。
P281:確実性が断言できる最初の年代は西暦461年
P304:欧州のキリスト教国の中で、日本ほど前非を認めるのが早く、技術について教えやすく、外交においては率直で穏健であり、戦争に際してはこれほど騎士道的で人道的な国があろうとは、とうてい主張できない。
アンドレ・ベルソール『日本人の昼と夜』
P326:サー・ユイノン・カメロン「世界中で中国人の商人や銀行家ほど信頼したいと思う人々はいない。・・・債務を履行しない中国人に出会ったことは一度も無い」
P327:欧州の銀行家や貿易商が不平をこぼすのは、日本の商人が実際に不正を故意に行う(不正は数多い)ことはもちろんだが、それよりむしろ、その狭量さ、絶えざる優柔不断、非能率的な習慣であり、これは想像を絶している。・・・日本は、観光には天国だが、貿易商とっては希望を埋める墓場である。
P329:偏見の無い人ならば、西洋人が日本人よりも汚いということを、少しでも疑うはずは無い。
P331:人力車:秋葉大助、高山孝作
P332:人力車の買値は30円、大都会の車夫は毎月30円稼ぐ。1891年にロシア皇太子を救ったのは向畑と北賀、二人の車夫。
P356:”万葉集以降のものをほとんど読みました。その全部を合わせても、ワーズワースの短編六篇ほどの想像力を含んでいるとは思われません。日本人の思想は、無味乾燥貧弱なのです”・・・”彼等は一緒に住むには全く魅力的な人たちだということです”
P362:”第一に、日本人の性格は芯が強く、第二に、日本人は明治の変革によって突然、欧化の光を当てられても目が眩まないだけの知的訓練を、それ以前に既に行ってきた。日本の西欧化を皮相的なものとする見解は、日本についての皮相的な知識の持主にのみ存する”


日本事物誌 (2) (東洋文庫 (147))

日本事物誌 (2) (東洋文庫 (147))

日本事物誌2 チェンバレン
P3:メンデルス・ピントーが最初に日本の土を踏んだ人であるとするなら、エンゲルベルト・ケンペルは最初に日本を科学的に発見したと言ってよい。
P5:中世期の記録を見ると高貴な人は頑健な部下の背に負われて逃げた。1333年頃、後醍醐帝もその姿で落ちた図がある。
P8:脚気が記録に現れたのは200年前、そのときから約70年前まで、太平洋岸の少数の港町と京都のような大都市に限られる。
P15:ラフカディオ・ハーン:彼の一生は夢の連続で、それが悪夢に終わった。
P19:日本語:擬人法を習慣的に避ける。
P28:法律:文語的な文書に口語体を用いるのを嫌う。
P29:陪審の結果が満足すべきものでない場合は、次に陪審を任命し、裁判官の意に従うものが出るまで無限に任命することができる。
P45:「英語でなら何を出版されてもかまいません。英語は学問の言葉で、比較的少数の人しか理解できないからです。日本語だと問題は別となります。」
P51:日本の商人は大量に買っても割引しない。
P53:西欧人は中国人や黒人を本能的に嫌う。
P57:琉球:三年経って始めての最後葬儀が行われた。
P65:庶民の結婚は相互の便益による単なる同居の場合が多い。・・・日本の花嫁には付き添いのメイドがいない。
P66:著者は恋愛結婚を一つだけ聞いた。30年間にである。
田村直臣『日本の花嫁』
P69:按摩:金貸しになるから恨まれる。総検校の直下の階級に上がるのに「千円」かかる。
P92:西洋の宗教という職業は、単に貪欲を隠す仮面に過ぎないと考えている。
P98:7日、35日、1回忌、3回忌はけっして怠ることは無い。白が喪の色である。
P100:雅楽部の「沈黙の音楽界」
P115:日本の造船所は外国の戦艦まで建造している。
P119:「編集名義人」=刑務所に入る役。
P127:大本教天理教、蓮門教
P130:円朝ウィルキー・コリンズ『ニュー・マグダレン』を巧みに翻案。
P134:サー・ハリー・パークス
P159:「大名のように愚鈍な」
P163:朝鮮では日本人移民は現地人に威張りちらし、しばしば乱暴な行為をする。
P181:日本の鉄道事業の難関は、地方の陰謀のために、土地収用法が殆ど死文化、地主の要求する法外な値段で土地を買収することが出来なかった。
P187:知識階級が何と言おうとも、大衆は神仏を信心する。・・・自分の来世は少しも気にかけないが、死者が自分の世話を必要とするかのように振舞う。
P196:霜柱は欧州には存在しない。
P198:神道:仏教の卑俗な部分や道教から盗んできた神秘的な学問の断片の寄せ集め。
P203:岩崎弥太郎:欧州人から重役や支配人、船長、技師を賢明に選び、彼等と共に会社を運営した。
P213:芸者は仕送りを止められた恋人を養う。彼は試験に合格し、官吏になる。
P228:四目十目
P274:鳥居:単なる「まぐさ」を意味したもの。