見る 目の誕生はわたしたちをどう変えたか サイモン・イングス
P32:子宮は闇ではない。外からの光は容易に通過する。・・・桿体と錐体は、400万年前のデボン紀に泳いでいたヤツメウナギから区別できる。・・・錐体細胞が充分に発達して中心窩が埋まるのは6歳頃
P43:スズメバチは相対運動を見分けられない。このマッピングによる視覚様式の下では全てのものは「停止」している。
P44:ヒキガエルは死んだハエを餌として与えても、目の前を飛ぶ生きたハエを待ち続けて飢え死にする。
P46:17世紀の彫刻家ジョバンニ・ゴネリは20歳で視力を失った後に、触覚に頼ってから傑作を生み出した。
P49:ポール・バック−イ−リタ
P51:桿体細胞は筋肉細胞
P52:人の眼は皮膚の一部が特化し、頭足類は神経組織から眼が発達した。人の網膜は内側向きで光受容器は後ろ向き、頭足類の網膜は外側向きで光受容器は光の来る方を向く。
P53:ホシバナモグラの鼻先には25000の触覚器がある。この神経末端の配置は哺乳類の網膜によく似ている。
P54:発見された最大の眼は、1878年にティンブル・ティックル湾で3人の漁師が生きて捕らえたダイオウイカの直径40センチ。闇の中で自身の触椀を見るには大きな目玉がいる。・・・マッコウクジラの胃袋からはダイオウホウズキイカのクチバシが見つかっているが、こっちの方が大きいかもしれない。
P59:偏光への適応という淘汰圧は逆の方向に、つまり偏光が感知できない眼を作る方向へと向かう。
P60:14世紀のラウダルフ・サーガに出てくる「ソーラーストーン」は「コーディエライト=菫青石」の破片かアイスランドの氷州石
P61:魚類や鳥類の一部は赤外線を感知するので、夜明け前や日暮れに威力を発揮する。
P62:ハタネズミ同士は尿で交信をとる。尿は紫外線を反射するので、チョウゲンボウは尿の痕跡を追う。・・・水晶体を除去すると人の眼でも紫外線を感知できる。→青みがかった白い光に見える。
P64:マーモセットのメスは人と同じ3色が見えるが、オスは2色。
P67:私たちは光は全て上から来るものと想定し、それをもとに影を解釈している。
P68:優れた絵画は片目だと本物と見まがうことがある。が、両眼になるとこの錯覚は消える。
P74:ステレオグラムが見えない−20人に1人は両眼立体視能力を欠いている。・・・立体視ができれば迷彩が見破れるので、食虫動物のキツネザルの祖先で進化した。
P82:「ファイ現象」
P83:「視機性反射」−デジタル・カメラの手ぶれ防止機能の生物版
P84:高速の被写体がぼやけるようになると眼は「移動撮影」を諦めて「アングルショット」に切り替える。これがサッカード。対象から対象へと断続的に移動して、選択した一連の「静止画像」を見るのである。
P87:1995年、眼に筋が無いAI−眼サッカードできない眼でも鳥のように首を振れば見える。
P92:カダヤシは左眼で番の相手を探し、右眼で捕食者を警戒する。・・・「オーストラリアウンバチクラゲ」はカメラ眼×8、スリット状の眼×8、ピット器官の眼×8、合計24の眼を持つ、クラゲで唯一交尾する。
P96:「オプトグラム」:1867年、ヴィリエ・ド・リラダン「クレア・ルノワール」→1897年、ジュール・クラルティ『告発者』→1902年、ジュール・ベルヌ『キップ兄弟』→1905年、D・W・グリフィス映画『国民の創生』の原作『クー・クラックス・クラン革命とロマンス』
P103:1876年、フランツ・ボル>1880年11月16日、ウィルヘルム・キューネは死刑囚の左眼網膜に残るオプトグラムを観察したが、それは死刑囚が最後に見た筈のものと符合しなかった。・・・蛙や兎ではある程度有効だったが、人の視覚機能から考えると無理・・・
P106:1869年、マキシム・ヴェルノワは17匹の実験動物を「明るい光のもとで」暴力的に殺害したが、死に際に眼に映っていた筈の物体や物理的な痕跡は、犠牲の網膜には発見できなかった。・・・オプトグラムによって有罪が確定したのは一件ある。1925年7月4日の手斧で8人を殺害したドイツ・リンブルグのフリッツ・アンゲルスタインは警察から被害者の網膜から「手斧を振り上げるアルゲルスタインの像」が現れたと述べると「自白」した。写真は公開されていないので、警察の嘘だろう。
P110:人は日中の光の10億分の1の光を見分ける。条件さえよければ、27キロ先のロウソクの炎が見える。・・・点眼された液体は鼻涙管を通って血液中に吸収される。
ジョージ・ワルド
P133:桿体細胞は錐体細胞から進化した。
P124:自然界で眼が発生した回数は40から60回。
P140:エビの触角は失われると別の触角が生えるが、2度以上触角を折られると、脚を生やしてしまう。
P197:脊椎動物の眼には骨がある。−人とワニは硬化性骨を失った。
P201:ウサギには中心窩がない。
P216:エマ・ケイは自分の記憶だけで『聖書、シェークスピア全集、世界観』を書いた。
P221:クリケット選手が球から目を放して球がバウンドする地点を見ることを発見したのはマイケル・ランド。・・・私たちは世界そのものではなく、反秒前の世界を動いているのか?。
P224:擬死は立体視をする生物には無効。
P227:マイケル・チャンス、アラン・ミード:人間は恒常的に予想外の行動に出る。・・・霊長類は恒常的な恐怖という条件に順応し、これに対応することを学んできた。
P228:どんなお馬鹿な生物の間でも集団生活は起こり得る。・・・人が最初に学んだのはお互いを道具として使うことだった。
P231:チンパンジーは(目線に無反応な)視覚障害者に攻撃行動を取る。
P239:人には7000語の感情的語彙と、その感情をさまざまな手段で表現する統語法が備わっている。
P240:タピオ・ヌメンマ『顔の言語』−シンプルな感情は口だけで判るが、複雑な感情の認識には「眼」の追加が必要。
P243:緊密な共同体内で、真に病的な嘘つきはバレたときに失うものが大きすぎる。
P250:エジプト新王国時代、光はラーが見ているという徴
P260:アル−キンディ
P262:アル−ハイサム
P275:ケプラー一家はおかしな人に事欠かない。
P287:1703年、ジャン・メリーは水に沈めた猫の眼がより「輝く」ことに気づく。
P289:チャールズ・バベッジ、ヤン・プルキンエ
P302:桿体細胞は赤い光に反応しないので、パイロットは暗視能力を損なうことなく、赤で照らされた計器を錐体細胞で読むことができる。・・・星を真直ぐ見詰めると、錐体が密集した中心窩で像が結ばれるので、よく見えない可能性がある。
P313:エルンスト・マッハは眼が関心を向けるのは「境界」だと気づく。
P319:2003年、スティーブン・デイキンのコントラストだけを残し、他の情報を全て除去した「ゲバラ肖像画
P329:ホメロス−”神々しい「三色」で染められたゼウスのすばらしい弓” 赤→緑→黄色
P331:ギリシャ古語では、海はワイン色、羊もワイン色、蜂蜜も樹液も全て「chloros」で、この言葉「黄/緑」を指すらしい。−ウィリアム・ユーアート・グラッドストーン”この作家(ホメロス)は他の詩人よりも見事に光を描写に使っているが、・・・色彩感覚は狭いだけでなく、曖昧模糊としていて内容がないと感じる”−ラザルス・ガイガー”緑は長い間、黄色と混同されていた・・・青いと言われるものは一切無く・・・そのころの人は何も青いと言わなかったし、言えなかった”
P334:ギリシャ人は(見えなかったのではなく)色をあまり重視しなかっただけかもしれない。−3世紀のヘリオドロスは6万語に及ぶ『エティオピア物語』を書いたが赤、緑、青という言葉は一度も使っていない。−1971年、ポリネシアの住人は「我々はあまり色の話はしない」といっっている。
P347:色素を増やすとほどに、含まれる色情報は減少する。・・・画家のように色を引き算する方法と、映写技師のように足し算する方法。
P349:「赤」の錐体が最も強く反応するピークは「550nm=黄色がかった緑」、・・・「赤」は黄色を感じる錐体が興奮して青い錐体が沈黙したときに形成される、・・・赤という刺激は、スペクトラムから青の波長を全て取り除き、黄色から緑の部分を強くしたときに感じられる。・・・色がものの性質でもなければ、ものが反射する光の性質でもなく、「心の産物」であることを明らかに物語っている。
P350:(青の錐体だけで感知される紫を除いて)私たちが見るさまざまな色は、少なくとも二種類以上の錐体で感じられている。
オットー・フォン・ゲーリケ
P356:エドウィン・H・ランド
P361:色覚は−明度、色相、彩度−が全て使われて、境界が認知されている。・・・モノクロの視覚が多次元になっただけなのだ。
P378:ヨハン・フリードリッヒ・ホルネル
P382:ドルトンは「赤の色覚異常」ではなくて「緑の色覚異常」:遺伝的分析から
P384:四色型色覚の女性「ミセス・M」は虹を見ると10種類の色が見える。・・・脳は、眼が送ってよこす情報のチャンネルがどれほど多くても処理できる。・・・色覚は可塑性を持つ。
P392:1986年、ジェレミーネイサンズ−青の錐体細胞の遺伝子の方が古い−
P393:1775年、レンキエキ台風がミクロネシアのピンゲラップ島を襲ったとき、生存者20人の子孫に出現した一色覚(全色盲)のため、現在、島民3000人中の5から10%はまったく色が解らない。
P404:1622年、リチャード・バニスターが追放したかったのは「教養がなく、理論も何もしらず、なのに図々しく商売をしようという、際限の無いほど厚かましい多くの女性たち」
P406:1777年、ヨーゼフ・アントン・フォン・パラディスの娘マリアの盲目は「心因性
P422:ブランドレーは1983年ラスベガスで開催されアメリカ泌尿器学会の会議でズボンを下ろし、筋肉弛緩剤を注射して「勃起させたペニス」を聴衆に触らせた。この講演がバイアグラの時代を切り開いたといわれている。
P424:「人口網膜」は網膜の「下」に施術する。−この種の人口視覚は光を感知さえ出来ればよい。
P434:1992年、ジョン・グライムズ「チェンジ・ブラインドネス」を発表、・・・サッカードしている間に変化が起こると、変化に気づかない・・・
P436:ドアでブラインドを作った瞬間に道を尋ねる通行人を入れ替える悪戯−は、1998年、ダニエル・シモンズとダニエル・レヴィンが考案。
「アテンション・ブラインドネス」−バスケットボール試合のパスを数えるように指示された被験者は、パスを数えるのに夢中になって、試合中にコートを横切る「ゴリラ」の存在煮に気付かない−この実験を思いついたのはダニエル・シモンズとクリストファー・チャブリス。
P437:1999年、ヤーコブ・フォン・ユクスキュル”動物にとって意味ある世界とは、動物が反応する事柄の集合だ”