眠れない一族―食人の痕跡と殺人タンパクの謎

眠れない一族―食人の痕跡と殺人タンパクの謎

眠れない一族 ダニエル・T・マックス
致死性家族性不眠症FFI
P47:「トリアカ」:主な原料は毒蛇の肉
P50:ベネチュア人が異国の王に頭を下げる格好になるくらいなら妻の真珠を踏み潰してしまう。
1849年のオーストリア軍の報告書:湿地状態のヴェネトでは住民の4分の一がマラリアに罹り、ペラグラが発生。400万人が新大陸へ移民。
P54:子供が多いと遺伝病が発生し易い。(15)少なくともこのFFIの一族では、貧しい家系ほどFFIの被害が大きいと言える。
P59:ロバート・ベイクウェル:交配させる羊を選ぶ天才だった。彼は羊の遺伝的関与率を95%にまで高めた(近親交配)→ディシュリー・レスター、一頭の種付け料1200ポンド(現代なら15万ポンド)
P62:1710年スミスフィールド市場で取引された羊の体重は平均13キロ弱、子羊8キロ。1795年には夫々36キロと23キロになる。・・・現代の羊には17世紀の羊の面影はあまり無い。
P63:サー・ジョセフ・バンクス:メリメ種
1820年代には、スクレイピーは欧州の羊肉・羊毛を壊滅させかねないほどになっていた。
P78:豪州が羊の飼育に乗り出し欧州の羊産業が崩壊する。近親交配が経済的な見返りを失い、品種改良が求められなくなると、スクレイピーに抗性のある血統が再び優勢を占め始めた。1913年には「あまり知られていない羊の病気」になる。
P79:20世紀初頭、ベェネトの湿地の水を抜きマラリアが終焉。
P84:イタリア進駐ドイツ軍が1945年4月に降伏するまでの2年間は、ファシスト社会主義者共産主義パルチザンが血みどろの抗争を繰り広げる。
P98:・・・豪州人は、彼ら(ニューギニア高地人)と接触し、文明の恩恵を授けてやりたかった。
P102:フォレ族もまた未開地を意欲的に開拓してきた部族で・・・
「後天性の免疫寛容」
P127:カールトン・ガイジュシェックの「素晴らしきクククク族」
P129:グラス夫妻:フォレ族には西洋社会で言う「家族」の概念が無く、友人と血縁者の区別も定かでなかった。
P131:北部のフォレは近隣部族のカマノから食人風習を取り入れた。今度はそれを見て感心した南部のフォレが食人行為を学んだ。「こんなにおいしい食べ物があったのに、今まで食べずにいたとは」
P132:元来フォレは埋葬を消化作用と捉えていた。大地が遺体を食し、豊穣になる。人間が食物になりうるという発想は、彼らの世界観に一致していた。
初期の巡察官や人類学者「食べてやる」と言われて肝をつぶしたが、これはフォレの間では普通に交わされる挨拶だった。・・・故人が女なら、腕と脚は嫁に、臀部と腸、外陰部は義理の姉妹に、故人が男なら、睾丸は叔父の妻たちに与えられた。・・・1950年代に宣教師が食人に反対すると、素直なフォレは食人を廃した。
P134:「遅発性ウィルス」
W・S・ゴールトン
「ホモジェネート」
D・R・ウィルソン「スクレピーの病原体は死なない」
ティクヴァー・アルパー
I・H・パティソン
J・S・グリフィス
「核生成」
P162:自分の唾液を喉に詰まらせて亡くなる。
P168:珍しい症例は貴重だ。脳組織はこの時代、頻繁に「行方不明」になっていた。
スタンリー・プルジナー:彼はマウスの代わりにハムスターを使う。マウスより速く発病するからだ。・・・1984スクレイピーたんぱく質の精製速度を100倍にしたと自慢した。・・・病原体に反応する抗体を生成することにも成功した。
「配座感化」
P200:シルヴァーノはレム睡眠中の最中でも動けた。
P215:BSEの発生は、プリオン研究者が本領を発揮する絶好の機会だと思われたが、間もなくその逆であることが判明した。
P216:アメリカ人頼らないイギリスの方針でプルジナーは無視された。BSEの発見から有効な予防策が出るまで8年間に20万頭の罹患牛と発症前だがその兆候のあった60万から160万頭もの牛が食糧供給経路に入った。・・・イギリス国民はBSE危機の全期間を通じて6400億食ものBSE罹患牛を口にしたと推計される。・・・プリオンにインフルエンザの様な強い感染力があったらなら、イギリスでは長年の菜食主義者以外は誰も生き延びれなかったろう。
「スタガーズ」
キャロル・リチャードソン
ジョン・ワイルスミス
「ケーキ・イン・パーラー=肉骨粉
リービッヒ男爵の「濃縮キューブ」→「アメリカ肉粉」、「ドイツ死骸粉」
P240:猫の「狂ったマックス」の感染が分かっってから1週間以内に、各地の学校は国産牛肉を使用禁止にした。
P247:4000人近いイギリス人が感染している。・・・想定死亡者数の上限を7000人とした。
P253:プリオン病について何も知らないことが露見した結果、プリオンの専門家は夢にしか見られなかったほどの巨額の補助金を貰える様になる。
P262:ガ氏「生命は核生成であり、分子の配座の変化であり、自己複製である」、「核生成アミロイド」
張曙光、「バッキーボール」
P266:西欧の人類学者は日常的に未開部族が人肉を食べると主張したが、これを裏付ける直接の目撃談は無い。・・・初期の高地巡察報告書にはフォレが自ら食人種と看做している旨の記載が多いものの、実際の目撃談は見つからない。
・・・食人は死亡率の高いプリオン病の勃発につながった。
ジョン・コリンジ、バリンの「ホモ接合対」
P268:プリオンタンパク質の遺伝子対の両方にバリンを持つイギリス人が総人口に占める割合は、ランダムに決まる場合より少なかった。
P270:イギリスで狂牛病に罹った患者は、一人を除いて皆、ホモ接合体(プリオン遺伝子にメチオニンを二つ持つ)だった。イギリス人の大半はヘテロ接合体。・・・FFIのホモ接合体のアッスンタとシルヴァーノは発症後短期間で亡くなり、ヘテロ接合のルイージアとテレーサは闘病期間が長かった。・・・ヘテロ接合がプリオン病にある程度の抵抗力を与えている。・・・世界中でヘテロ接合体が多すぎる。
・・・プリオン遺伝子にもともとコードされていたアミノ酸メチオニンであり、バリンが同じ部位に現れたのはおよそ50万年と判明した。新しいアミノ酸が、無目的に発現し、これといった悪影響が無い場合、何十万年にもわたって居座り続けることがある。この年代はホモ接合体が減少し、ヘテロ接合体が増える結果を生む出来事が起こる可能性のある最古の時代と看做すべきだろう。
P272:農耕以前の感染症は「遅発性」、宿主を無事に乗り換えるのに時間が必要だった。・・・先行人類と共存するのに好都合なのは「人肉」による拡散。
P274:フォレのクールー蔓延は20世紀初頭に、たった一例の散発性CJDから始まったと思われる。50年もたつと一部の村で住民の半分が死に絶えるほど強力な悪疫が猛威を振るうようになった。
・・・80万年前、スペイン「アタプエルカ遺跡」のグリン・ドリナで見つかった洞窟入口の二体は共食いされている。骨の髄液が吸い取られた様だ。
P282:年間5000人が病死し、「1日」20万件の食中毒が起きていると、米国国立疾病管理センターは報告している。
P284:人口の多くがホモ接合体であるため、日本はBSEを非常に恐れていた
P293:餌の量が少ないと胃の中の微生物が死んでしまうので、鹿の栄養吸収能力が落ちる。
P296:「高級鹿管理」
P300:ジャネット・スカーベック
P306:C・J・ギブス「自分のあった散発性CJD患者は全員、庭仕事がとても好きだった。」植物用の肥料も、牛の骨粉を含んでいる。
「キナクリン」
堂浦克美
「ペントサン」
P321:・・・遺伝性プリオン病の毒性が散発性や感染性のものより強いことを示唆している。