狂気という隣人―精神科医の現場報告 (新潮文庫)

狂気という隣人―精神科医の現場報告 (新潮文庫)

狂気という隣人 精神科医の現場報告 岩波明

P9:宮内勝は「人類の三分の一」は精神分裂病と断言した。顕在的な「精神分裂病」とは言えないが、思考や行動パターンが「スキゾフレニック」な割合は、全人口の10から20%近く存在している。
「精神科救急」、都立松沢病院、合併症病棟群
P19:精神科患者がらみの事件は不起訴となり警察官にはやる気が出ない。
「マル身」、「遅発性癲癇」
P33:「病的な旅」−彼等は都会に向かう
P34:母親との心中を図った患者=加害者に対し「被害者が死んで殺人事件になれば捜査するが、今のままなら警察は取り調べはしない。退院でも転院でも自由にしてもらって構わない」−刑事事件にならないので取り調べ自体に意味がないと考えている。
P36:「心神喪失医療観察法
P44:「ひまわり」の担当者は定年退職した保健所の事務職員。
P45:後方転送には消防署の救急車は使用できない。
P46:36万の精神科病床は日本全診療科ベッド数の2割。
P56:電気ショック−「無けいれん法」、「有けいれん法」
P58:「措置入院」なら医療費は病院に入る。
P67:1879年上野公園内に設立された東京府癲狂院、「癲狂」は養老律令に見られる。
P70:日本の「座敷牢」は1950年まで合法。
P71:岩倉大雲寺、成田癲狂院小松川狂疾治療所
本郷加賀藩邸跡の「めくら長屋」に養育院を設立。
P80:「食いっぱぐれ入院」
P85:・・・つらい苦しい状況、あるいはショッキングな出来事が原因で、人間は精神病に罹患するということはありません。・・・「精神病」と呼ばれるような重症な状態は、ストレスフルな身の回りの出来事によって形成されるわけではありません。精神病に対する多くの「心因論」的な解釈は、大部分誤っています。
P86:「スキゾイド」−「孤立を好み、周囲と打ち解けず、対人関係をうまく持てない」
P88:全人口の1%は精神分裂病を発症している。この事実は環境や文化などの社会的要因よりも、生物学的要因によるもの・・・離島や山間僻地に発症が高い地域は遺伝的要因が集積した結果。・・・精神分裂病患者は冬季の生まれが多い。この理由に冬季のウィルス感染との関連を指摘する研究もある。
P96:「犯罪白書」の「殺人」は9.1%が精神障害者による。「放火」11.9%
P101:「時間解放」
P103:「静かな殺人者=サイレント・キラー」
「類破瓜病(ヘボイドフレニー)」
P109:しばしば司法機関は世論に迎合し、過去においても明らかな精神分裂病患者が死刑囚として処刑されたケースが存在しています。
P112:私見では、中安信夫鑑定の「精神分裂病」が一番妥当で、保崎秀夫の「人格障害」も必ずしも間違いではないが、内沼幸雄の「多重人格」は完全な誤診である。
(幻聴と殺人)
P124:認知心理学的には「自己モニタリングの障害」
P125:「良性の」幻聴はあまり多くみられない。
サイレント・キラーの様な精神分裂病の患者は、殺人自体を快楽としている、精神病質(サイコパス)の殺人者とは明らかに異なる。
P127:「犯罪性類破瓜病」
P128:・・・(『羊たちの沈黙』の)レクターがサイコパスだとしたら、典型的なサイコパスとは程遠い。(中略)連続殺人犯というのは、非常に稀な存在なのだ。北アメリカには、おそらく百人も居ない。それに対して、サイコパスの方は、北アメリカに二、三百万人は居る。(ロバート・D・ヘア『診断名サイコパス』)
P131:XYY症候群と呼ばれる染色体異常の犯罪傾向は、現在では必ずしも支持されてはいない。・・・22番目の染色体異常「キャッチ22」は精神病の発症率が高い。
P134:「自己臭恐怖症」
ドグラ・マグラ』、『黒死館殺人事件』、『虚無への供物』
P147:『ドグラ・マグラ』の呉一郎の症状は精神分裂病ではなく、「側頭葉てんかん」である。
「反射癲癇」
P149:「人権派」「保安派」「耽美派
(自殺クラブ)
P155:自殺率の高い日本は、東欧を中心にした旧社会主義国と類似した社会的、精神的構造を持っているのか?
島田荘司「自殺者の王国」
P157:精神分裂病患者の20%は自殺して亡くなると遺族に説明する精神科医師もいる。
P160:精神疾患は患者から医師に「感染する」と主張する医師もいる。
P179:「覚せい剤精神病の遷延持続型」
P185:・・・最も問題なのは、大学病院の精神科に、重症の患者の治療をしようという姿勢が殆どないこと・・・
P194:日本には司法精神医学が全く育っていない。・・・日本にはマスコミ好き・テレビ好きで犯罪マニアのための「鑑定屋」をしている精神科医は何人かいますが、彼等はほとんど現場での治療経験がなく、実際の役に立つとは思えません。
(保安病棟)
P198:ベスレム王立病院
P207:「マクノートン・ルール」、ブロードモア病院
P215:「処遇困難患者=触法精神障害者」は、入院患者34万人の0.57%、約2000人と推定される。
1994年「青物横丁医師殺人事件」
P221:臨床的に確実にPTSDと診断できる症例は極僅かに過ぎない。日本全国で数百人にも満たない。対して精神分裂病は総人口の約1%、うつ病患者はその3倍から5倍で数百万の患者が居る。