怖い絵3

怖い絵3

怖い絵3 中野京子
ボッティチェリヴィーナスの誕生
西風ゼフェロス、フローラ、精霊ホーラ
極端ななで肩や窪んだ胸元は、モデルが肺結核だったか?、健康美の持ち主ではないことは確かで、微かに病的な匂いを漂わせている。・・・母がなく、父の精液だけから生まれた。
P15:顔の左・右が驚くほど違う。日が差す右側は無垢で愛らしい。翳りのある左は陰々滅々としている。
この絵は16世紀初頭にはメディチ家所有だったことが証明されている。
レーピン『皇女ソフィア』
幽閉生活9年目、左に黒ずくめの侍女、窓の外には吊るされた銃兵隊長。ソフィアの風貌は判らないが、200年後に描かれたこの絵で「太って醜かった」イメージが決定された。
P27:ロシアは欧州の田舎と思われていたので、欧州の宮廷から嫁入り話がなく、また臣下に嫁ぐのを恥としたので、ソフィア以前のロシア皇女は、生涯独身。
伝レーニ『ベトリーチェ・チェンチ』
アンリ・ベールにしてアリゴ・ベーレ、筆名スタンダールの『イタリア年代記』中の『チェンチ一族』、父フランチェスコ・チェンチは「神を信じず教会へ一度も行かなかった」
P41:グイド・レーニより半世紀後に生まれた女性画家、エリザベッタ・シラーニ説が有力で、モデルはベアトリーチェではない。・・・フェルメールはオマージュとして『真珠の首飾りの少女』を描いた、証拠は当時オランダには被る習慣のないターバン。との主張もある。
ヨルダーンス『豆の王様』
P46:「公現祭」の「一日王様」
P52:『インゲン豆を食べる男』−ネギは生で食べた
『ヨーハン・ディーツ親方自伝』−17世紀後半、床屋の徒弟は毎朝パン一個と「後ビール」(汲み終ったビール樽に水を混ぜた)
ルーベンス『メドゥーサの首』
ルーベンスは頭部を、蛇や虫は助手のフランシス・スネイデルが描いた。・・・ルーベンスは仕事の分担を隠さず、作品の価格付けをしていた。
シーレ『死と乙女』
「乙女」はシーレの愛人ヴァリ、この時代モデルは娼婦の次に軽蔑された職業、場合によっては娼婦よりなお悪いといわれた。
ヴァリは従軍看護婦に志願してしょう紅熱に罹って23歳で死ぬ。
P82:シーレは16歳でウィーン美術アカデミーに合格した。彼が入学した翌年、一つ年上のアドルフ・ヒトラーが不合格になる。
ブリューゲルイカロスの墜落』
P89:ヤマウズラ=ダイダロスの甥タロス
P94:農夫も羊飼いも釣り人も、必死に目を閉じ耳を塞ぎ・・・、2002年、所蔵先ベルギー王立美術館は別人作と認めた。
ベラスケス『フェリペ・プロスペロ王子』
ラ・トゥール『聖母子像』のイエスはミイラのようにぐるぐる巻き(この「スワドリング」は19世紀まで世界中に見られた。日本では「おくるみ」)
ミケランジェロ『聖家族』
青年群像の後景は「異教的古代社会」、聖家族の前景は「キリスト教世界」、この新旧の境界に、イエス誕生を予言した(毛皮をまとう)ヨハネがいる。
P117:男性としての能力があっては困るのでヨセフは老人に
ドラクロワ『怒れるメディア』
リール市立美術館所蔵の1838年版とルーヴル美術館蔵の1862年コピー版がある。
ゴヤマドリッド、1808年5月3日』
この事件のときゴヤは全聾状態の62歳、描いたのも6年後、
レッドグレイブ『かわいそうな先生』
P145:「先生」(原題"The Poor Teacher")とは「ガヴァネス」=「住み込みで上流階級の子女を教える家庭教師」、「零落したお嬢様」
19世紀にはカヴァネスは供給過剰になる。
シャーロック・ホームズ』には6人のカヴァネスが登場する。
ジェーン・エア』のシャーロット・ブロンテ自身カヴァネスとして多くの家庭で働いた。
ノーベル賞マリー・キュリーも元カヴァネス。
この絵が発表されるのと前後してロンドンに「カヴァネス援護教会」が設立された。
レオナルド・ダ・ヴィンチ『聖アンナと聖母子』
P157:座り方が変
P161:マリアは青いマントをハゲワシの形態で身に纏っている。
フーケ『ムーランの聖母子』
二連祭壇画の右翼、別所蔵の左翼には聖母子に祈る寄進者と聖ステファノが描かれている。
P168:この女性はアニエス・ソレル=シャルル7世の公式寵姫、常に胸を露にしたファッションで、ダイヤモンドを最初に身に付けた女性。
P172:2005年に遺骨から高濃度水銀が検出される、水銀入り化粧品を全身に塗りたくっていた。
当時の化粧品−水銀、鉛白、ミョウバン水、硫酸、石黄(天然の硫化水素)、軽石の粉末、絵の具、カンタリス(甲虫の粉末)、毒人参、食酢、蜂の羽、蝙蝠の血、猪の脳ミソ、・・・
ベックリンケンタウロスの闘い』
ホガース『ジン横丁』
P190:蝸牛は「怠惰」と「精神的堕落」のシンボル
P193:18世紀ロンドンの6軒に一軒は「ジン・ショップ」、ミルクよりジンの方が安かった。年間一人当たりの消費量63リットル。
この絵は『ビール街』と一対になっている。
ゲインズバラ『アンドリューズ夫妻』
この絵の怖さは農夫や雑役夫の不在、農業従事者が期間限定のパートタイム労働、仕事が終われば、田園には搾取の痕跡が見えない。
P208:蕪>大麦>クローバー>小麦の四輪作で休耕不要に成る。
「第二次囲い込み」で理想的農村風景が出現する。感染症が減り家畜も人間も健康に成るが、土地を失った者は『ジン横丁』の住人に。
アミゴーニ『ファリネッリと友人たち』
P223:教会こそがカストラートの生みの親。公式に登場するのは1599年。オペラ界にカストラートが居なくなっった後もなお一世紀の間、教会ではカストラートが歌っていた。世界最後のカストラートがシスティナ礼拝堂を去ったのは、1913年である。
アンソール『仮面にかこまれた自画像』
「死んだ鼠の舞踏会」
P234:この絵ではルーベンスの仮面を被っている、晩年はルーベンスに似てきた。
フュースリ『夢魔
「ディオダディ館の幽霊会議」は、ケン・ラッセル監督で映画化、1986年公開『ゴシック』
パーシー・シェリー「恐怖は人間の作り出したものに過ぎない」
バイロン「恐怖は人間が此の世に現れる前から存在し、人間が滅びた後も残る」